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冬 東 ②

「・・一太?!いつから・・」 「あ、俺、その・・」 一太はどう答えるべきか戸惑っているようだ。 目が少し泳いでいる。 「梓からも連絡がきてたんだ。こっちに戻ってきたらすぐに話がしたいから、駅で待ってるって・・」 遠見は観念したかのような顔で笑って言った。 「え・・」 東は驚いた。 「東と梓から同じような連絡が来たから、これはバレたかなって覚悟はしてたよ。でもまずは東と話したかったから、梓には到着時間を少し遅めに伝えておいたんだ」 遠見はその場から動かず話し続けた。 一太は遠見の声を聞くために、少し前へ出て東の後ろに並んだ。 東は背後に来た一太に視線を向けた。 「一太・・どこから、聞いてた?」 それから東は恐る恐る聞いた。 「・・俺、ごめん。その、早く着いたから、待ってようと思ったんだ。でも東がベンチに座ってたから、東と一緒にいるのはダメだと思って遠見が来るまでこの柱の影に隠れてた・・」 一太は東ではなく遠見を見ながら答えた。 「・・つまり、最初から聞いてたってことだよね?」 遠見は笑って言った。 一太はうなずいた。 「梓は真面目だから待ち合わせの時間より早めに来るだろうなぁとは思ってたよ・・」 遠見は少し伏し目がちに言った。 「これが真実。俺が全部仕組んで、お前と東の仲を壊した。梓に俺のこと見て欲しかった。そのために、俺はお前の気持ち踏みにじって傷つけた」 「・・遠見・・・」 一太は遠見の告白にどう答えてよいか、どう反応するべきなのか迷っているようだ。 その瞳には、怒りではなく悲しみの色が浮かんでいる。 「・・ごめんね、梓」 そう言うと遠見は一太に何かを渡した。 「今までありがとう。少しでも、梓の隣にいれたこと、嬉しかったよ」 「・・えっ、ちょっと待って遠見・・おれ・・・」 「お前のこと騙して、東のこと騙して、一人だけ幸せになろうとしたんだ。そんな奴の隣には、もういたくないだろ?」 そう言うと遠見はくるりと二人に背を向けた。 「あとは、お前らで話しなよ。本当の気持ち」 遠見はそう言うと歩き出した。 「遠見、待って・・」 一太は遠見を追いかけようとした。 しかし遠見は一太の伸ばした手を払いのけて肩をグイっと押して遠ざけた。 「バイバイ梓、また学校でね」 普段通りの声のトーンで遠見は言った。 しかし遠見の顔には先程まで見えていた笑顔はなかった。 そしてそのまま、駅を出ていった。

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