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春の始まりに ④

それから、東は時々一太と連絡を取るようになった。 あくまでも親友として、近況報告を送る。 一太も最初はどういう風に返事をすればよいか迷っていたようだが、少しずつ昔のような雰囲気で接するようになった。 鈴香には友人関係に戻りたいと伝えた。 鈴香の事は好きだという事、でもそれが友情を超えていないという事を正直に言った。 てっきりこれでもう鈴香との仲は元に戻らないだろうと思っていたが、鈴香は以前と変わらず明るく接してくれた。 そんな鈴香に、東は感謝とそして愛情を感じるようになってきた。 そんな話も一太に出来るようになった。 確実に気持ちは、変化していっている。 そうやって時間はあっという間に過ぎていった。 そうして迎えた高校の卒業式。 その日を終えた二日後、東は懐かしの地へ向かった。 生まれた時から十六歳の年まで過ごした故郷。 そして少し変化したようにも感じる懐かしい駅には、大切な親友の姿。 高校を卒業したら一度三人で集まろうと提案したのは東だった。 『久しぶりに二人の顔が見たい』そう一太に連絡をした。 遠見とも時々連絡は取っていたが、やはり一太との回数が圧倒的に多い。 二人で並んで高台の公園を目指して歩いた。 「なぁ、一太」 東は遠見と合流する前に一太に言っておきたいことがあった。 「何?」 一太は東の表情をうかがうように答えた。 「俺さ、お前とこうやってずっと友達でいられて、嬉しいよ」 「えっ・・」 思いがけない言葉に一太は少し驚きの表情を見せた。 「友達以上になりたいって思った時もあったけど・・でもきっと俺達はこの距離感がちょうど良いんだよな。お前の一番の親友として、お前を支えてやりたいし、支えてもらいたい。友達じゃなきゃ言えない事や出来ない事もあるもんな。それは俺だけの特権だよな」 「東・・・」 一太は東の顔をジッと見つめた。 「うん、東は俺の一番の親友だよ。ずっと、これからも」 そう言って一太は微笑んだ。 一太にとっても東は誰にも代えられない、かけがえのない存在だ。 それは、昔も今も変わらない。 ただ少し形を変えただけ。 この親友はどんな時も暖かな気持ちにさせてくれる。 気持ちの良い春の日に、もうすぐ離れるこの町で君の隣を歩けて良かった。 一太は心の中でそっと思った。

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