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春の始まりに ⑤

高台の公園へいくと屋根のあるベンチコーナーで遠見が座って待っていた。 「とぉーみ!」 東は大きな声で叫んだ。 遠見はその声に気付くとゆっくりと振り向く。 そして柔らかく笑った。 「東、遠くからお疲れさま」 「なんのなんの、久しぶりに帰ってこれて俺も嬉しいし!」 東はニコニコとしながら遠見の肩をポンポンと叩いた。 「もう少し遅く来たら桜満開だったのになぁー」 東は公園に生える桜の木を見つめ残念そうに言った。 「その頃には俺達はもうこの町にはいないよ、ね、遠見」 一太は遠見の正面に座りながら話しかけた。 「そうだね」 遠見は少し寂しそうに笑った。 三人はそれぞれ机を挟んで向かい合う様にベンチに腰掛けた。 そして高台から自分達の町を見下ろしながらゆっくりと話し始めた。 「遠見はもう引っ越し準備終わったのか?」 「うん、荷物ももう送った。広島には親戚いるから色々手伝ってもらえて助かった」 「そっか、一人暮らしいいなぁ、憧れるわ」 東はグッと腕を伸ばしながら言った。 「でもお金かかるし、やること増えるし、実家から通えるならそれにこしたことはないでしょ」 遠見は微笑みながら言う。 「そうだけどさぁ~友達とか彼女とか呼びやすいんじゃん?」 「「え?」」 東の発言に遠見と一太が同時に驚きの声をあげる。 「東、彼女出来たの?」 一太が聞いた。 「あぁ、まぁね。いや、二人とも知ってるから、鈴香だよ」 「あっ・・」 一太が小さく声を漏らした。 「卒業式の日に、俺から告白した。もう一度やり直したいって」 「・・そうなんだ」 一太は少し顔を紅潮させて答える。 「そっか、良かった。なんか、安心した・・」 「なんだよ安心って!!」 東は笑って両手でグシャグシャと一太の髪をかき回した。 「わっ、やめろよ!!」 一太が笑いながら東の手を払い除ける。 東はニシシと笑うと遠見と一太を見つめて言った。 「だからさ、お前らも、いい加減もとにもどれよ?」 「「え・・」」 二人は同時に答えた。 「俺はな、今人生の春がきてんの!一年間必死に受験勉強して、その間も鈴香はずっと隣で笑ったり励ましてくれて、俺はなんて幸せなんだろうなぁって思ったよ。この子のこと、大切にしたい、ずっと一緒にいたいって思うようになってた。だから告白して、OKしてもらえて、俺は今超幸せ。だから、さ」 東はそこまで言うと遠見の瞳を見つめた。 「遠見、時々お前がこっちの近況を教えてくれるの楽しみだった。お前らも頑張ってるんだなって思ったし、離れていても繋がってるって感じたよ。東京とこの町と両方に親友がいる俺って贅沢だよな。だからさ・・俺は俺で楽しく幸せにやってるんだ。だから、お前らも・・」 そう言うと、東はスッと立ち上がった。 「あとはお前らで話せよ!!」 「えっ、東?!」 それまで黙って聞いていた一太だったが、慌てて立ち上がり東の腕を掴んだ。 しかしそんな一太の肩を東はポンと叩いた。 「一太、そろそろもういいんじゃない?俺はお前らが幸せにやってるところ見たいんだよ!」 東はそう言うとニコリと笑い鞄を手に持った。 「うんじゃ、俺これから田町達と約束あるから行くな!!」 「え?!何だよ、それ?!」 一太は驚いて声をあげた。 「いや~俺相変わらず人気者だからな。こっち来るって話したらみんな会いたがってくれて、ありがたい話だよ!そう言うわけだから・・じゃぁな、一太、遠見! また連絡くれよ、広島も遊びに行くからさ!」 そう言うと東はドンドンと歩き出した。 その背中に遠見が声をかけた。 「東・・ありがとう、また会おう」 東は片手を上げてニッと笑って答えた。 そしてそのまま振り返ることなく公園から出ていった。    

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