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第3話

「あんた、俺を買うつもりか?」 「買う?買ってほしいのなら、それなりのことをしてもらうぞ」  青年は、貴遠の言葉を聞くなり唇を舐めた。舐めて、目を細める。 「イイぜ、俺を下に敷くなり、あんたが俺の下に敷かれるなり、好きにしな」  言って、思い出したように青年は運転手の方を見た。 「…あのさ」 「なんだ」 「ここですんの?」  親指で運転手を指し、青年は嫌そうな顔をした。  貴遠は、思ってもみない反応に、吹き出した。 「なに、笑ってんだよ。あんた、お付きに見られてもかまわないのか?もしかして、見られないと濡れないタチか」 「面白いなお前、俺はまだ買うとも言ってないが」 「………あ、そ…」  青年は貴遠の瞳をつまらなさそうに見つめ、何かを承諾したように頷き、そっぽを向く。  貴遠は再びそっぽを向く様に頬杖をついたその顔を見た。 「おまえ、まだ若いだろう。未成年か」 「はぁ?もしかして、説教するつもりかよ。残念だけど二十歳だよ。ハタチ」 「十七くらいか?店を追い出されたくなければ…」 「うっせぇな、十八だよ。来月で」  唸るように白状したその顔を見て、貴遠は微笑を零し、ふと真顔になる。 「俺はガキを抱く趣味はない」  貴遠は腕を組み、嘲笑うようにその顔を見た。瞠目し、まだ幼さの残るその青年は思い出したように貴遠を睨みつけた。 「ガキ扱いすんなよ」 「お前がガキだと知らされずに縛られるのはなんとも哀れだな」 「てめぇ」  声を荒げ、青年は貴遠の胸倉を掴んだ。  目を背けることもなく見据えた貴遠は、間近にその双眸を見た。  貴遠の唇を、その唇で塞いだ青年の瞳を。 「…、…っ…」  青年の舌が、強引に貴遠の歯列を割ろうとする。それを否定するかのように貴遠は唇に力を込めた。  貴遠の胸倉を掴んだその指が、ネクタイを強く締める。わずかに怯んだその隙を、青年は無理矢理に滑り込み、貴遠の舌へと自らの舌を絡ませた。  貴遠が観念した様に舌を差し出すと、青年はそのまま吸い上げた。  満足した様に舌を絡ませていた青年が目を伏せた瞬間、貴遠はその頭を抱えて更に深く唇を重ねると、唾液が唇の端を零れていくのをそのままに、お互いを貪る様にキスをしていた。  青年の指が手慣れた様子で貴遠のネクタイを外した時、ふと唇が離れた。

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