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第3話 2068年12月25日
哀川の訃報は夜のニュース番組で知った。
クリスマスだというのに、独り寂しくテレビを観ていた時に見知った顔が映り、片桐は手の震えが止まらなかった。
『今日の夕方頃、◯◯町の見通しの良い交差点で事故があり、普通乗用車を運転していた哀川至さん(34)が全身を強く打ち、その場で死亡が確認されました。目撃者の証言によると、哀川さんが運転する車は赤信号の交差点に猛スピードで進入し、大型トラックに激突。トラックの運転手は病院に運ばれましたが軽傷とのことです。また警察の調べでは本来どの車にも標準搭載機能であるAIによる自動運転機能がオフになっていたため、警察は事故だけではなく事件の可能性も視野に入れて捜査を進めています。またAIによる自動運転を危険視している団体によるとーー』
片桐はそこでテレビを切った。
真っ暗な画面に自分の疲れ果てた顔が写る。
「ははは……っ」
意図せず笑えてきた。
あまりに劇的なニュースに、感情と表情が追いつかない。
ぽろぽろと涙が溢れてきても、片桐の笑いは止まらなかった。
「ははは……っ、哀川さん……はは、至さん……っ」
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