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「……なっ、何言ってんだっ。そんなことするわけが……大和っ!」 「大丈夫。政迩はただ俺に任せてればいい」 「全然大丈夫じゃねえだろ! 何考えてんだよお前っ……」  どうやらとんでもない方向に話が転がってしまったらしい。今の大和はどうかしているし、白鷹に限っては元々どうかしている。俺はそんな男二人に、これから一体何をされるというのか。不安と焦りで、全身から嫌な汗が噴き出してくる。 「あっ……」  リビングのソファに背中から倒され、俺は慌てて身を起こそうとした。が、すかさず大和が俺の上に体重をかけてくる。 「や、大和っ。何考えてんだよ、マジで!」 「お前を手放したくないってことしか考えてねえ」 「馬鹿言うなっ……。あ、明日だって仕事なんだぞ。二人して寝坊なんかしたら――」  他にもっと言うべきことがあるはずだけど、こんがらがった思考が全く現実に追い付けていない。それでもどうにかして大和を思い留まらせようと必死になっていると、 「だったら、俺が起こしてやるよ」 「えっ? ――うわっ!」  ソファの後ろ側からふいに伸びてきた手が、俺のシャツを豪快に捲り上げた。 「し、白鷹さんっ……。あんたまで、何やって……」 「そろそろ二月も終わりだし、まだ売上予算越えてねえだろ。今月100パー越えなかったら、お前ら半殺しの刑だからな」 「100行くに決まってんじゃないすか」 「大和っ……あっ、やめ……」  大和が俺の腰に両腕を回し、無防備にさらけ出された乳首を口に含んだ。瞬間、首から上がカッと熱くなる。 「馬鹿かお前っ……やめろって、ば、大和っ……」 「彼氏がヤりたい時にヤらせねえと、長続きしなくなっちゃうぜ」  俺の背後で白鷹が体勢を低くし、伸ばした舌で俺の耳をなぞった。「やっ、……」背中がゾクゾクと粟立つ感覚に、思わず変な声が出てしまう。 「政迩、乳首立ってきてる。ほんと好きな、ここ」 「う、……」 「足りねえよ。もっと舐めてやれ、大和」 「っあ、あ、ちょっと、マジで何なんだよっ……」  空いた方の乳首を背後から白鷹に摘ままれ、俺は身を捩って二人から逃れようとした。だけどもちろん、無駄にでかい体をしているこの二人から逃れられるはずもなく。 「ま、マジで……いい加減にしろ、馬鹿共っ……あっ!」 「チカは先端を指で擦られるのが好きなんだな。硬くさせちゃって、エロい奴」  指の腹でゆっくりと俺の乳首を擦りながら、白鷹が可笑しそうに囁いた。 「ふ、あ……。や、大和っ……お前、俺がこんなんされてて、いいのかよっ……!」 「これは俺と白鷹くんの勝負だから。安心しろ政迩、こんな奴にお前のことは渡さねえ」 「ば、馬鹿言ってんじゃねっ……。これのどこが勝負なんだっ……あっ! あっ……」 「チカちゃんも素直じゃねえなぁ、体は正直なのに」 「い、あっ……。あ、やめっ、ろ……!」  大和と白鷹、二人の間で何がどうなって、こんなことになってしまったのか。未だに分からない。もしかしたらこれは夢なんじゃないかと思ったほどだ。だって、彼氏と彼氏の元恋人の二人から、こんな馬鹿げたことをされるなんてどう考えてもおかしい。  あの短いやり取りで、大和と白鷹が同時にこの「勝負」の意味を理解し、実行するなんて。息がぴったりとか、以心伝心とか、そういう次元を超えている気がする。  俺はこの二人に恐怖すら感じ、無意識のうちに涙を溢れさせていた。 「大和、靴とジーンズ脱がしてやれよ。ブーツの横にジップ付いてんだろ。それ下ろせば簡単に脱がせられる」 「ああ、そうか」  大和が俺のブーツを脱がし、床に直接置いた。次いでジーンズに手がかけられる。 「やめろ、大和っ……。脱がしたら怒るからなっ」 「でも脱がさないと、政迩がイけねえじゃん」 「イかなくていっ……やっ、……!」  下げられたジーンズから現れたのは、紛れもなく……下着越しに盛り上がった俺のそれだ。 「嫌、だっ……!」  恥ずかしさに、顔が耳まで赤くなる。 「若いんだから我慢すんなよ、チカちゃん。乳首だけでもうギンギンじゃねえか」 「う、うるせっ……あんた、いい加減にしろよっ! どれだけ俺達の間をややこしくすれば気が済むんだっ!」  白鷹がソファの前に回ってきて、床に直接あぐらをかきながら言った。 「ここまできて、意地悪なこと言うなよ。せっかく色男二人が、お前を賭けて勝負しようとしてるのに」 「勝敗は見えてるけどな」  俺の上から降りて、大和も白鷹の横に膝をついた。二人が俺の左右の脚をそれぞれ持ち上げ、大きく開かせる。 「な、なんだよ……やめ、ろよ」  こんな恰好をさせられたら、嫌でもこの先の展開が読めてしまう。 「政迩。暴れたら危ねえから、大人しくしててな」 「大人しく、って……できるわけ、あぁっ……!」  言ったと同時に、下着と脚の付け根の隙間から大和の手が入ってきた。 「や、やだっ……! あっ、あ……」 「中、汗かいてる。暑いか?」  下着の中で、俺のそれが大和の手によって激しく揉まれる。 「嫌っ……ぁ、あ……マジでやめろっ……大和、っ……」  俺のツボを知り尽くした絶妙な力加減と、この状況を白鷹に見られていることへの恥ずかしさ。それから、頭の芯が痺れるほどの、どうしようもない快楽の波。俺の頭の中で、体中で、それらがごちゃ混ぜになって渦を巻いている。  俺ははしたなく大股を開いたまま、次第に自分の声の質が変わって行くのを感じていた。 「……あ、あぁっ、――ん、……そ、そこ……やめろ……」 「余裕なくなるから?」 「もっと他の所も触って欲しいんだろ」 「うわっ、……あっ、やだっ……!」  更に反対側から白鷹の手も入ってきて、いよいよ腰が激しい痙攣を始める。 「はぁっ、……は、あっ……」 「エロいし、気持ち良さそうな顔だな。チカ」  大和と白鷹――二人の男の手が、俺の先端から中間の竿部分、それから根元、更に下の膨らみからその裏側までもを……限りなくいやらしい動きで揉み続けている。  それは今まで一度として味わったことのない、言葉では言い表せないほどの快楽だった。 「あ、あ……。ん、……やっ、……もう、やめっ……」 「窮屈になってきたな。政迩、パンツ脱がすから腰上げろ」 「……は、あ……」  俺は大和に言われるまま腰を浮かせて、染みの付いた下着が下ろされてゆくのをじっと見つめた。 「どうせだから上も脱いどけ」  白鷹が俺のシャツを脱がし、床に放る。  この二人の絶妙なコンビネーションは何なのか。  もはや俺の意思なんて、二人にとってはどうでもいいらしい。好き勝手に触れられ、脱がされ、卑猥な言葉を投げかけられて。俺がいくら話し合おうと言っても、ちっとも聞く耳なんか持たずに。勝負とか訳の分からないことを言って、ただ俺を弄んで。  急に、何もかもが馬鹿らしくなってきた。 「……ん」  伸ばした手で大和の腕を掴み、ソファの上へと引っ張り上げる。 「どうした?」 「………」  俺の隣に座った大和の首に無言で両腕を巻き付かせ、唇を合わせる。激しく舌を絡ませ合う俺達の足元で、白鷹が俺のそこを軽く握って上下に扱き始めた。 「んっ、ん……ぁ、ああ……」 「政迩、……」  唇と舌を合わせながら、大和のシャツを脱がしてゆく。ベルトに手をかけたところで、大和が低く囁いた。 「白鷹くんに扱かれて気持ちいいか。政迩、俺とどっちがいい?」 「……どっちも……あっ、同じようなモンだ」 「可愛くねえの」  あの夜、店で白鷹にされた時も思ったが――この二人の愛撫はどこか似ている。恐らく大和の手付きや攻め方は、少なからず白鷹のそれが影響しているのだろう。  愛撫のやり方といい、ここまでのコンビネーションプレイといい……何だか二人が付き合っていたという事実を、今この瞬間まざまざと見せつけられている気になった。

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