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「大和、ビール貰うぜ」
「温くなってますよそれ。昨日の夜、しまい忘れたやつだ」
「その方がいいだろ」
床に転がっていた缶ビールのプルトップを引いて、白鷹がそれを……あろうことか俺の下半身めがけて傾けた。
「やっ、あ……何してっ……!」
温くなったビールと真っ白の泡が、屹立した俺のそれに容赦なく浴びせられる。俺の下半身はもちろん、ソファも床もびしょ濡れだ。
「あっ、あぁっ!」
ビールに濡れた俺のそれを、白鷹が根元から舐め上げる。痺れるような羞恥と快感に、頭の中がどうにかなってしまいそうだった。
「俺もこれ以上は素面じゃ無理だな」
「う、嘘っ……大和っ!」
大和が便乗し、白鷹の横に移動して俺のそれに唇を寄せてきた。二人の男の舌が俺のそれを舐め回す。下から上へ、角度を変えながら、音をたてて、何度も――。
「あぁっ、あ! やだっ、ぁ……」
白鷹の口に含まれた膨らみが、更に舌で転がされる。大和が先端を舌でくすぐり、そのまま深く咥え込む。熱いのか寒いのか、気持ち良いのか苦痛なのか。あまりのことに、何もかもの判断がつかなくなる。
「い、あぁっ……、吸うな、って……!」
二人の口から卑猥な音が漏れ、俺の口からは涎が垂れていた。瞼が自然と半開きになる。俺はぐったりとソファに身を投げ出し、脚だけは大きく開いてビクビクと体を震わせた。
「うあ、ぁ……もうイく……。もう、無理……あっ、あ……」
「いいよ、政迩。俺の口の中でさ」
「ああぁ、あっ……!」
一際激しい震えが体の奥底から沸き上がってきて、俺は大和の口に咥えられたままで絶頂を迎えた。
「はぁ、……あ、あ……」
大和の喉の動きで、俺が放出したそれを飲み込んでいるのが分かる。
白鷹が濡れた手を払ってビールの水滴を落とし、大和の頭を軽く叩いた。
「これで終わりじゃねえだろ。大和、こっち」
白鷹が床にあぐらをかいたまま、俺が脚を開いて座っているソファに背中を預けて寄り掛かった。
「……政迩、平気か?」
「え……何……」
もはや意識朦朧状態となった俺の腕を大和が引っ張り、そのまま反対側を向かせてソファの上に膝をつかせる。両膝で白鷹の顔を跨いだ恰好だ。また口でイかされる羽目になるのだろうか。
「チカちゃん、まだ出し足りねえみたいだし。次は俺の番だな」
「あっ、あ……」
俺はソファの背もたれに体重をかけて寄り掛かり、下から咥え込んでくる白鷹の口に自身のそれを委ねた。
「あぁ……、あ、……っん……」
「政迩、気持ちいい? 白鷹くんに咥えられて、すげえエロい声出してるし」
「そ、そんなこと、ねえけど……」
「けどやっぱ、俺の方がいいよな。……いくぜ、政迩」
背後からグッと腰を持ち上げられ、大和の硬くなったそれが俺の入口にあてがわれた。
「ああっ!」
前では白鷹が俺のそれに舌を絡ませ、後ろからは大和のモノが侵入してきている。さっきまでの愛撫とは比べ物にならない。身を焦がすような、凄まじいほどの快楽だ。
「あっ、あっ! や、大和っ……あぁっ!」
大和が腰を打ち付ける度、白鷹の口の中で俺のそれが激しく揺れる。白鷹の舌や頬の内側の粘膜で先端が擦られ、ビクビクと脈打っている。一度射精したはずのそれは再び熱を持ち、俺の中でまた新たな波が押し寄せ始めていた。
「政迩、っ……安心しろ。今日は俺、十分じゃ済まさねえからな……!」
「あぁ、あっ……大和、激し……すぎっ……」
「止まんねえんだ、ごめん……」
「い、いい……。気持ち、いっ……」
「くっ……」
大和の熱くなったそれが俺の奥まで到達し、腰の動きを止め、更に奥の奥へと入ってくる。
「ああ、あっ!」
それから、一気に引き抜かれる。俺は大和に支えられた腰をくねらせながら、そのゾクゾクとした快感に一際高い声をあげた。
たっぷりと唾液を絡ませた後で、白鷹が自身の口から俺のそれを抜く。
「チカのここ、また勃ってきてるな。一回出したくせに、大和より先にイッちゃうんじゃねえの?」
そう言って、白鷹が尖らせた舌先で俺の先端をくすぐった。膝が震え、全身から力が抜けてゆく――。
「や、……あ、あぁ……」
「ていうか、……そろそろ俺の勝ちでいいんじゃないですか」
大和が俺を背後から抱きしめて言った。
「何言ってんだ。自分だけ挿入しといて、勝ちも何もねえだろうよ。これじゃ勝負にならねえじゃん」
「まあどっちにしろ、ハナから白鷹くんにヤらせる気はないですけど……」
「それより腰が止まってんぞ、チカちゃん待ってるんじゃねえの」
再び大和の腰が前後し始める。待ってるも何も、俺はもう何かを考えることすらできない状況に陥っていた。
引き抜かれ、深く挿入される。また引き抜かれて、また挿入される。何度も、何度も……激しく音を立てながら。
時間の感覚なんてとうに無くなっていた。あるのは焼けつくような脳への刺激と、恐怖と紙一重のような快楽だけだ。
「ああ、あ……あ、あ……」
「政迩……」
「あっ、あ……大和っ……」
背後から俺の耳元で、大和が「愛してる」と囁いた。
「お、俺もっ……大和、愛してる……大和っ」
「好きだよ、チカ」
「俺も好きっ……好き、大和……あぁっ」
俺は壊れかけた機械人形のように、大和の囁きに必死で応えた。
「目の前でいちゃつくなよ。バカップルめ」
白鷹が俺のそれを握り、苦笑する。
「チカちゃんすげえアクメ顔。もう意識トぶ寸前て感じだな……」
「う、あっ……あ、あぁっ……」
白鷹の手に擦られた瞬間、俺は自分でも分からないうちに射精してしまった。
「あ――」
身体中の痺れが、心地好い脱力に変わってゆく。頭の中がぐるぐると回り、まるで意識だけがメリーゴーラウンドに揺られているみたいだ。「トぶ」ってこういうことなんだ――俺の中のどこか冷静な部分がそう囁いて、妙に納得してしまった。
「政迩、……俺もイきそ……」
中に入ったまま、大和が腰の動きを止める。いつもはそれほど感じないはずなのに、今だけははっきりと、大和の熱い体液が中に注がれるのが分かった。
「は、あ……」
ソファに倒れ、俺は目を見開いて荒い呼吸を整えようとした。どういうわけか眠くて仕方がない。だけど目を閉じたらそのまま二度と起きられない気がして、怖かった。
「チカ、お疲れ。すげえ可愛かったぞ」
白鷹が俺の頭を撫で、笑っている。
「それは俺の役目なんだって、白鷹くん」
大和が白鷹をどかしながら、むくれている。
「あ……」
俺は大和の腕の中、半開きの目で彼の顔を見上げた。
「や、まと……」
「政迩。俺は、……」
大和が何か言っている。だけど集中してそれを聞こうとすればするほど、見えない何者かの手によって意識が持っていかれるみたいだ。俺は大和の動く口元を見つめながら、高校の時の授業中もこんな感じだったな、とぼんやり思った。
結局、勝負はどちらが勝ったことになっているのか。そもそも初めから勝負なんて本当にあったのか。俺の伝えたかったことがまだ言えてないとか、大和はこれで白鷹と仲直りできたのかなとか――。
頭の中で、様々な思いが行ったり来たりを繰り返している。それに釣られて視界までもがゆったりとした回転を始め、俺は強引な睡魔の誘惑に耐えきれず、……目を閉じた。
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