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第2話

ざわざわと騒がしい、カフェ店内。 その雑音を掻き消すかのように、東生(のぼる)がコーラに刺さったストローをクルリと回した。 カラカランッ、とグラスに氷のぶつかる涼やかな音がし、心地良く耳に響く。 「悪ぃな。急に呼び出して」 「……、別に」 ぼそりと呟き改めて周りを見渡せば、客層は女性ばかり。 それもその筈。女性受けする洒落た内装と雰囲気。そして可愛らしいメニューの数々。 目の前にいる東生──白金の短髪にピアス、黒のレザージャケット姿の厳つい男が選んだ店とは、とても思えない。 「お前さぁ、まだ燻ってんの?」 東生が少しニヤついた顔のまま、軽口を叩く。 「就活はどうしたよ。……愛咲(あいら)が心配してたぞ」 そう言われて気付く。 ──ああ、そっか。さっきまでここに、愛咲がいたのか。 妙に納得しながらキャップのツバを下げ、腕を組んで俯く。 「そろそろ安心させてやれよ。……お前ら、付き合ってんだろ?」 「……」 付き合ってる……訳ないじゃん。 愛咲が勝手に、僕につきまとってるだけ。 「……まぁ、いいや。 これ、この前の……人前式の写真な」 焼き増ししたんだろうカラー写真が、剥き出しのまま投げ寄越され、テーブルの上を僅かに滑る。 ツバの先から覗き見れば、それは遠目でもわかる……樹と真奈美のツーショット。 幸せそうな笑顔の二人。 「お前も来れたら良かったのにな。真奈美(まなみ)ん、チョー綺麗だったぞ。 つーかさ。安定期入っても、まだ悪阻続いてるんだってよ。 ──大変だよな、妊婦って」 「……」 それでも──樹の子を孕めたんだから、いいじゃないか。 唇をキュッと引き結び、写真から視線を外す。 ……ああもう。 さっきから心の中で毒づいてる僕は……本当、最低。 でもまさか、東生。この写真を渡す為だけに、わざわざ呼び出したんじゃないよね。 キャップのツバを下げたまま、少しだけ顔を上げる。 僕は、コイツが嫌いだ。 東生があの時、余計な言動をしなければ。……多分、樹は僕から離れたりはしなかった筈だから。 少なくとも、拗れたりなんか……しなかった──

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