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第11話

「……綺麗だねぇ」 向かいのシートに座る愛咲。 外の景色を眺めるその顔が、夕焼け色に染まっている。 大きな瞳。小さくて可愛らしい顔。 細くて長い、サラサラの髪。華奢でスラッとした手足。 舌っ足らずでアニメがかった声が、可愛くて堪らない……と、男子の間では人気の愛咲。 いつもなら子供っぽく(はしゃ)ぐ愛咲が、しおらしく座っている。 その空気が、何か変で。 ……居心地が悪い。 「……」 「……愛月(あき)」 ゆっくりと上るゴンドラが、もうすぐ頂点に達しようとした時だった。 いつになく真剣な愛咲の瞳が、少し緊張した様子で僕を捕らえる。 「……好きです。 私と、付き合って下さい」 「………」 ──瞬間。 何となく、悟った。 解ってしまった。 「えっと……あのね。 実は、愛月に告白するの、皆に協力して貰ってて。……それでね、」 ふて腐れた空気を露わにした僕に、愛咲が慌てながら笑顔で説明してくる。 「……」 せめてこの告白が、偶然の産物だったと思いたかった。 一度は感謝した東生への気持ちを、見事に踏みにじられた気分。 ……最低。 何だよこれ。 茶番、過ぎるだろ。 「……下につくまでに、返事が、欲しいなぁ」 悪気のない、愛咲の笑顔。 困らせているのは解ってる。 解ってるけど…… 「……」 僕はそれに 何も……答えなかった。 地上に降り立った僕と愛咲の前に、人影が差す。 「……どうだった?」 東生。 片手を上げ、ニヤついた顔。 最初から僕など一切見ず、愛咲に話し掛けている。 「──!」 ……え、待て。 ここに東生が居るって事は…… 樹と真奈美は……? 振り返って見れば、一つ見送った次のゴンドラから、二人の姿が。 先に降りた真奈美は、愛咲を見つけるなり駆け寄って飛びつく。 後から降りる樹。複雑な表情を浮かべ、後頭部に手をやりながら……あからさまに僕から視線を逸らした。 「……えぇーっ! おめでとぉ。良かったね、真奈美(まなみ)んっ!」 愛咲……だけじゃなかった。 真奈美から相談を受けていたらしい東生は、樹との仲まで、取り持っていた…… ──最悪だ。

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