12 / 15

第12話

「……」 テーブルに置かれた写真。 樹と真奈美の、幸せそうな笑顔。 東生が、コーラに刺さったストローを指で弄んだ後、引き抜く。 「あん時さ、樹にも協力させて、愛咲とお前をくっつけようとしたんだよ。……ガキだよな、俺も」 軽く溜め息をつきながら、濡れたストローの先を口に含むと、テーブルに投げ捨てる。 「──お前、好きだったろ。樹の事」 は…… ……な、んだよ…… 頭を少し上げ、ツバの先──東生を睨みつける。 何でも解ったようなフリして…… それでよく、僕に愛咲を押し付けてきたな。 幾らフラれたからって。愛咲が好きだからって。 ……そこまでするかよ、普通。 あー、クソ。 やっぱりコイツ、……すっげえ嫌い。 「昔、お前らをホモって言った事、覚えてるか? あん時お前『キショい』とかって叫んだじゃん。 ……でも、あんな全力で否定されたら、逆に肯定してるようなもんだろ」 「……!」 「まぁ、樹は……そうは思わなかったみてぇだけどな」 ──え。 それって。 僕のせいだって事……? 「……まーでも。 どっちにしろ、俺が発端だった訳だし。 今更、取り返しつかねぇけど。………少しぐれぇ、わび入れさせてくれ」 そう言った後東生が背筋を伸ばし、店の入り口──僕の背後へと視線を向ける。 「……愛月」 背後から聞こえる、懐かしい声。 その瞬間──愛おしさが込み上げ、胸がキュッと柔らかく締め付けられる。 「よぉ、樹。……まぁ、ここ座れよ」 東生が席を立ち、樹に譲る。 「ちょっとトイレ」と東生が離れ、それと入れ違いに樹が座る。 小さな空間に、樹と二人。 遊園地のベンチで過ごした日から、約半年── もう春だというのに。樹の羽織ったパーカーから、あの晩秋の匂いがした。

ともだちにシェアしよう!