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第13話

テーブルに置かれた写真。 それを、徐に樹が拾う。 「………結婚、おめでとう」 喉奥から、何とか声を絞り出す。 樹を見上げる。キャップを外す事無く。 「式、行けなくてごめん」 「……いいよ。体調悪かったって、愛咲から聞いてたから」 「……」 何処までも優しい、樹。 穏やかな瞳が、真っ直ぐ僕に向けられる。 『俺には…お前だけだ』 あの頃の樹は、僕との距離はゼロだった。 いつも傍らには樹がいて──肩が触れ合ったり、不意に抱きつかれたり。 思わせ振りな台詞だって、何度も言われてたのに。 ……何で気付かなかったんだろう。 何で……もっと早く、素直になれなかったんだろう…… 「……大丈夫か? 奥さん、身重だろ?」 「うん。最近は匂いづわりのせいで、俺の匂いもイヤって、よく家から追い出されるんだよ」 困ったような顔をしながらも、樹の笑顔は……穏やかで、幸せそうで。 ──完全に、惚気。 「……」 目を伏せ、俯く。 そんな樹の顔は見たくなくて、キャップのツバで覆い隠す。 「……はは。真奈美らしいね。 写真、見たよ。 人前式……意外と派手だったみたいだね」 「………うん」 相槌を打ちながら、静かに写真をテーブルに戻す。 「……なぁ、樹」 「ん?」 「……どうして、僕を避けたの?」 あの時……曖昧にしてしまった事をぶつける。 今更感は否めないけれど。 「僕が……キショいって、言ったせい……?」 「……」 樹の動きが、止まる。

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