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友達ができました

「カズはどっから来たんだ?」  俺の職場の同僚となった傍らの少年ハインツが適当に俺の服を見繕ってくれながら、俺に尋ねてよこす。何処……何処って言えば分かりやすいかな? 異世界って言って信じてもらえるか? 人間関係構築の第一歩で、なんか頭のおかしな奴だと思われるのも嫌だし「ものすごく遠くから」と俺は曖昧に言葉を濁した。  ハインツはオレに尋ねてきたものの、さして興味もなかったようで「ふぅん」と相槌を返された。 「やっぱりカズもご主人様狙いな訳?」 「え……?」 「え? ってなに? ご主人様はオーランドルフ家の血統だよ? 庶民から見たら充分玉の輿だろ? それともご主人様を足掛かりにもっと上を狙ってるの?」 「はぁ!? いやいやいやっ、俺はそんなのは全然! 路頭に迷ってたら旦那様が拾ってくれただけで、そんな事微塵も……」  ハインツは「ふぅん?」と不審気な横目で俺を見やるのだけど、え? なに? もしかしてハインツは玉の輿目当てであの家に仕えてんの? 「旦那様、旦那様ってあからさまに媚び売ってるから、絶対玉の輿目当てだと思ったのに、違うの? そういうの迷惑なんだよねぇ、そういう輩は仕事もしないでご主人様に色目ばっかり使ったあげく、結局クビになるから仲良くなっても無駄だしさ」  なんという事だ、そういう事か! 「俺は媚びなんて売ってない!」 「旦那様呼びなんて、明らか媚びだろ。なんでご主人様って呼ばないの?」 「え……だってライザッ……っと、旦那様がそう呼べって……別に俺はどっちでも……」 「!?」  しどろもどろで俺が返すと不審気な表情から一転、ハインツが驚いたような表情でこちらを見やった。 え? 俺、また変な事言った!? 「ご主人様がお前にそう言ったのか?」 「うん、使用人的に駄目だって言うなら俺もご主人様って呼ぶけど、なんか駄目なの?」  『ご主人様』でも『旦那様』でも似たような言葉でどっちでもいい気がするんだけど、なんかルールでもあんのかな? 「そうか、ご主人様がそう言ったんなら僕がとやかく言う事じゃないや。へぇ、そうか……ご主人様って意外と……ふぅん……」  ハインツが俺の事を上から下まで眺め回す。 「ところでカズはなんでそんな服なの? 全然サイズが合ってない」 「あ……これ、旦那様のだから。俺の服、ワームに溶かされちゃって……」 「ワーム?」 「そう、俺はワームに襲われてる所を旦那様に助けられたんだ。旦那様は命の恩人だよ。しかも、路頭に迷ってた俺に仕事までくれたし、めっちゃいい人!」 「……そうか、既にお手付きか」 「え?」  ハインツは少し苦笑して「助けてくれたのがご主人様で良かったな」と、そう言った。 「ワームの体液ってのは結構な猛毒なんだぞ。ワームの繁殖を食い止めても、毒が残れば頭がいかれて淫売に落ちる。中途半端な事をされれば身体が性行為を求め続け、まさに生き地獄だ。淫売宿の連中なんかはワームを使ってそんな娼婦を作り出すって聞くな」  ちょ……聞いてないっ! 何それ怖いっっ!!  ぞっと顔を青褪めさせていると、ハインツは「カズは後遺症もなさそうだし、よっぽど念入りにご主人様に治療されたんだろ?」とにやりと笑う。されたさ、そりゃもう何度も念入りにされたさっ!  あれにそこまでの意味があるとか、知らなかったし、改めて感謝すべきなのか? 「なるほどね、治療の過程でご主人様もカズに情が移ったって所なのかな? それで今の所カズは使用人扱いという事なんだね。はいはい了解了解」  ハインツは何かに納得したように頷いてるけど、俺は意味が分からない。俺にも分かるように説明してくれよ! 「まぁ、ある程度事情は察した。災難だったなカズ。ついでにうちのご主人様がお人好しなのも改めて実感するな、はは」 「ライザックは滅茶苦茶良い人だよっ!」 「旦那様の次は呼び捨てか、ご主人様、さすがにこれはちょっと甘やかしすぎじゃね?」  あ……しまった、つい。慌てて俺が口を塞ぐと、ハインツは更に笑う。 「まぁ、ご主人様が容認してるなら僕が口出しする事じゃないな。改めて宜しくな、カズ」 「え? あ……宜しくお願いします!」  差し出された手を俺が慌てて握り返すと、ハインツはにかっと人の良い笑みを見せた。

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