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救出

 耳元で何やらわーわー喚く声は聞こえているのだけれど、俺の意識には霞がかかる。言われた事に適当に相槌を返していると、周りはひとしきり騒いだりしているのだが何故騒いでいるのかまでは理解が出来なくて、俺はぼんやりと喧騒を眺める。俺は眠いんだよ、寝かせてくれよ…… 「おい、お前! 聞いてるのか!?」 「んんぅ……?」  だから俺は眠いんだって。ホントこの熊うるさいな。 「もう寝る時間だよ、熊しゃんも少し黙って」  そう言いながら俺がその大きな熊のぬいぐるみの腕に抱きつくと、周りから「きゃー」と歓声が上がる。もう何なんだよ、さっきからうるさいなぁ。 「な、なん……お、俺はお前の色香になぞ騙されんぞ!」 「はいはい、ねんねしよなぁ」  ソファーは本当に大きくて、熊さんのサイズ的にはちょうどいいのかもしれないが、俺にとってはベッドと変わらない。完全に睡魔に負けた俺が熊さんの腕にしなだれかかるようにしてうつらうつらし始めると、俄かに店の入り口から慌てたような声が聞こえてきた。ホントここ落ち着かないな。 「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので……」 「カズは何処だ!! ここにいるのは分かっているんだぞ!」 「はい、ですから落ち着いて話を……」 「カズ!!」  ばん! と大きな音を立てて扉が開く。そして、そこに立っていたのは息を切らし髪を振り乱したライザックで俺はきょとんと首を傾げた。 「らいじゃっく……?」 「カズ! 無事だったか!!」  人を掻き分けるようにして俺の元へとやって来たライザックが力の入らない俺の身体を抱き上げてぎらりと熊さんを睨み付ける。 「これはどういう事ですか、ベアード様!」 「それはこちらの台詞だなライザック・オーランドルフ殿。てっきりミレニアが血相を変えて駆けつけると思いきや、何故あなたがここへ?」 「あなたが私の恋人を攫ったと聞いて、黙っていられる訳がないでしょう! 何故こんな事を! あなたはミレニアが私の元に残りズーランドに帰らないのがそんなに気に入らないのですか! だとしても、私の許嫁を攫うなど言語道断! 許されない犯罪です!! 場合によっては国同士の諍いにだって発展しかねない軽率な行為だと分かっているのですか!?」  一気にまくしたてるライザック、けれど頭がぼんやりしている俺は彼の言ってる言葉の半分も意味が理解できない。それは熊さんも同じなようで、怪訝そうな表情で「どういう事だ?」と小首を傾げた。 「この小僧はミレニアの恋人だと俺は聞いていたのだが……? 小僧自身もそう言っていたぞ?」 「そんな事実はありません! カズは私の妻になるのです、誰にも譲る気はありません!」  妻? 誰が? 誰の……?  背中に回るライザックの手が温かい。何を言い争いしているのか眠気が勝る俺にはさっぱり内容が理解できないのだけど、うん、やっぱりライザック好きだなぁ……

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