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お披露目会

「お披露目会? 俺の?」 「ああ、今週末本家での開催が決まったそうだ。カズの体調を思うと少し不安ではあるのだが……」  話があると俺の部屋を訪れたライザックが神妙な顔で告げた言葉。正直体調は全く良くないけど、こういう大きな家となると嫁となる人間の人となりは一通り値踏みされるんだろうな……行きたくないけど、行かなきゃ行かないでライザックが色々言われるのも目に見えている。だから俺は彼を安心させるように「大丈夫だよ」と頷いた。 「このお披露目会、実は母が本家に話を通してくれたもので、挨拶の時にはとてもそっけなかったが、内心では私達の結婚を喜んでくれていたのだろうね」  ライザックは俺の言葉に安心したのか、にこりと笑みを見せる。親戚づきあいはあまり好きそうじゃないのに、やっぱりライザックは俺との結婚が嬉しいんだな。そんな風に思ってもらえるなら俺も嬉しいよ。  それにしてもハロルド様がお披露目会の準備を? それはちょっとびっくりだ。  ライザックの母親の名はハロルド・オーランドルフ。本家の第一子として生まれたが、生まれながらに身体が弱く跡継ぎにはなれないだろうと早々に分家に嫁に出されたという人物。  同じ家に暮らしながらほとんど話した事もなくて、基本的には気に入りの使用人しか傍に寄せないちょっと変わった人。ハロルド様のお世話は通いで長年夫婦で仕えてくれている使用人とミレニアさんの仕事で、俺は今まで遠くから眺めているだけ。  だけどライザックと結婚するとなったらハロルド様は俺の姑になる訳で、まさか挨拶もなしにという訳にもいかない俺達は2人揃ってハロルド様に挨拶に行ったんだ。その時のハロルド様の様子はあまり芳しいモノではなくて、俺を上から下まで眺めて瞳を細めると、一言「そう」と言った直後「体調が悪いから」と俺達は部屋から追い出された。  反応を見るに歓迎はされていないというのは体感できたし、ミレニアさんに早い段階で「出産は幸福ばかりを運んでくるモノではない」と釘も刺されていたので、まぁそうですよねぇ……なんて半分諦めの気持ちでいたんだけど、ライザックは「母はいつもあんなものだ」と気にするそぶりがなかったので、俺もそうかと納得していたんだよ。なのにアレでいて喜んでくれてたんだ? 「カズの衣装を仕立てなければな!」 「え……今から? それに仕立てって高いんだろ? いいよ、適当なの身繕ってくれれば」  正直格式とかそういうの俺全然分からないし、何を着て行っていいかも分からないけど、さすがに今から今週末までに仕立てるなんて特急料金とかかかるんじゃないの? 俺はこの家の家計が火の車だって事も聞いてるし、実際ここまでこの屋敷で働いてきて、思っているよりこの家が貧乏なんだって事も理解してる。そういう無駄遣いはやめた方がいいと思うな。 「美しい妻を美しく飾り立てるのは夫の甲斐性なのだぞ」 「甲斐性の前に先立つモノだろ? 無駄遣い良くない! そういう金は子供に使って、俺の見栄えなんてどうでもいいよ、最低限お前の横に立って恥ずかしくなければそれでいい」  驚いたような表情のライザックが崩れるようにへにょりと笑った。 「私の妻は堅実だ、見栄えばかりを気にして文句の多い親戚連中とは大違いだな。私はカズを誇りに思うよ」 「? やっぱり親戚付き合いって大変?」 「面倒くさい事は私が一手に引き受ける、カズは安心して子供を産んでくれたらそれでいい」  ライザックは笑顔でそう言ったけど、否定はしない辺りやっぱり大変なんだな。お披露目会かぁ……何もないといいけれど。

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