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第二戦①
この戦い一戦一戦特に順位を決める訳ではなく作品は作品として展示され、それを見て観衆は作り手の人となりを判断しろと、これはそういう戦いであるらしい。というか元々お見合いパーティだしな、戦いというよりはこれは嫁に相応しい人間を品定めする為の催しの色の方が強いらしい。
まぁ、順位を付けられた所で俺がロゼッタさんに勝てている要素なんてミジンコ程もなかったから、明確に負けを宣言されなかっただけ気持ちは楽かな。
そして迎えた第二戦、次の勝負内容はお料理対決。うん、何となくそんな感じじゃないかと思っていたよ。目の前に並べられる食材と調味料、好きな物を選び好きな物を作れって、俺、料理もそこまで得意じゃないんだよなぁ……
俺の両親は共働きで、そんな忙しい両親のもと育っている俺は多少の料理の知識は持っている。自分の食べたい物を喰いたければ自分で作れと母親には躾けられていて、ネットを漁ればレシピは幾らでもあったし、何となくその程度には出来るのだけど向こうの料理って電子レンジや圧力鍋ありきのレシピ多かったよなぁ……と俺は思う。
俺達に与えられた時間は一時間、少なくとも10人前は作れって無茶を言う。まぁ、終わった頃にはちょうど昼過ぎだ、俺達の作った料理がゲストの昼食になるのだろう。
個々で場所を決められた調理台、何故かミレニアさんとは引き離された。俺の隣に配置され、相変わらず余裕の笑みを浮かべるのはロゼッタさん。そんな配置を決めたのは勿論主催者なので、何となく引き立て役にされているのかな……ってそんな気がした。
「あなた料理はお好き?」
華麗な包丁さばきを見せながらロゼッタさんが俺に声をかけてきた。
「俺は作るより食べる方が好きですね」
「そこは私も同じかな。料理なんて基本的に料理人が作るものだから私が作る必要などないのです、嗜みとして学びはしたけれどあまり得意ではないのですよね」
あれ? そうなんだ意外。淀みなく包丁で野菜を切ってるから料理も得意なのかと思ってた。
「あなた、ミレニアとも仲が良いの?」
「仲良くは……ないんじゃないですかねぇ?」
俺はミレニアさんには嫌われている、と思っていたのだけど正直今はよく分からない。いつも言葉もあたりもきついのだけど、何故か時々妙に優しい。さっきも俺を助けてくれたし体調も気遣ってくれた、だから実はそこまで嫌われている訳ではないのかも? なんて俺は思い始めていたりする。アレか? 世に聞くツンデレか? まぁそれでも現時点、仲良しではないと思う。ミレニアさんの優しさがデレだとしても、今の所それはとても分かりづらく、ちょっと判断には迷うよな。
「仲良くないのに一緒にいたの? 私にはミレニアが君の世話を焼いているようにも見えたのだけどな。他人に対してそっけないミレニアにしては珍しいと思っていたのに」
「そういえばロゼッタさんもミレニアさんのいとこなんでしたっけ?」
「そう、幼い頃にはライザックも含めて3人仲良く遊ぶ事もあったのに、最近は2人とも私に対してそっけなくて……ライザックに至ってはまるで私を避けるようにしていて一体私の何がいけなかったのだろうか?」
ロゼッタさんが野菜を切る手を休めて大きな溜息を零す。
「ライザックの好みは君のような小さな者なのだろうか? 私にはそこまで魅力がないのだろうか?」
ええ……それを俺に聞かれても困る。ロゼッタさんは世間一般的に見れば魅力的だと思うんだよ、ただちょっと方向性がおかしいだけで。だけどそれを俺が言ったら嫌味にしかならなくない? これは単純に需要と供給の不一致なだけで、ロゼッタさんに魅力がないというそういう話ではないんだから。
「ロゼッタさんはそんなにライザックが好きなんですか?」
「当たり前だろ? 私の初恋なんだよ、私はこの恋を成就させ何の障害もなく結ばれると思っていたのに……」
あう……なんかごめん。だけど、だからと言って俺だって簡単に引き下がる訳にはいかないんだよ。
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