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やっぱり好きなのは

「シノブゥ? どこいった〜ん?」 高い声で間延びした関西弁がドアの向こうから聞こえて、ハッと自分を取り戻した。 「シノブ〜来いって言うたで! はよ来んと……」 たぶん屋敷中に響くくらいの大声で言ってるし、この後言う言葉は口にしてはならないものだから、なんとかしなきゃと僕は思った。 「僕はここだよ!」 僕は目を閉じて、叫んだんだ。 「あっ、おったわ」 オリベが落ち着いた声色で言うのを聞いて目を開けると、目の前にオリベがいた。 「ごめんね、待たせたね」 変な気持ちは残っているけど、平然を装う僕。 「ほんまやで、すぐ見せたかったんやから」 口を尖らせながら、オリベは淡いピンク色のTシャツを渡してくれた。 「かわいい! ありがとうね、オリベ」 好きな人からプレゼントされたことはないから、本当に嬉しくて微笑んだ。 でも、オリベは僕を鋭い瞳で睨む。 「オリベ……?」 戸惑うように名前を呼んだ口は閉じなかった。 なぜなら、その口に伸びてきた白蛇が入り込んだから。 もう一匹はお尻の穴へ突っ込んでいく。 「アッ、アッ……アアッ」 喉の奥と肛門もウネウネと進むのが苦しい。 ギャアア!とけたたましい叫び声が聞こえ、それを齧る音が2回すると、解放された僕はオリベの胸の中へと納められる。 「ごめん、俺のせいやわ」 強く、苦しいくらい抱きしめてくれるオリベにやっぱりこの人だと確信したんだ。 「僕には……オリベだけだよ」 自分が言った言葉に初めて自信を持った。 オリベと見つめ合うと、白くなっていた髪がなぜか黒く変わっていた。 「僕の血、吸っていいよ」 心配して言ったのに、オリベは苦笑いをする。 「…俺、今お前に殺されかけたわ……」 胸を右手で押さえるから、ごめんと謝るると、ええのと口角を上げる。 「その前に片付けたい案件があんねん。その後でええか?」 優しく頭を撫でるオリベにうんと言うと、軽く唇にキスをくれた。 「でも、まずは……あいつやな」 ボソッとつぶやいた瞬間に、目の前からオリベが消える。 その代わりに聞こえてきたのはコハクさんの叫び声だった。

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