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第6話

ガチャッ――と扉を開けると、そこには朝のセレドナと同じように顔面蒼白の少年が立っていた。 きっと、ルベリアが朝から何も食べていないのでお腹を空かせていると思ったのだろう。その両手には栄養がありそうなメニューの食事が乗った盆を持っている。 「ああ、良かった……朝からまったく姿を見せないので心配していたんです。それに、朝から何も食べないなんて――さぞお腹が空いているでしょう?これを食べるように、とあなたのお父上から言われたのです……さあ、どうぞ?」 肌が雪のように真っ白な、その少年の名はジルガといい、ルベリアが幼き頃からずっとこの城で仕えていた謂わば召し使いだ。 そうはいっても、他の召し使い達とは違って年はルベリアとそう変わらない。そのせいか、妙に気の合う二人は僅かながらとはいえ、たまに会話したり暇があれば城内を散歩したりしていた。 「えっ……父様から__言われたって……どうしてなの?」 「ルベリア様。あなたのお父上は心の底から心配なさっているのですよ……そうでなければ、この料理をわざわざ手作りして取り置きした後に、あなた様のところへ持って行けなどと命じる訳がありません」 少年の口から放たれた言葉を聞いて、思わず息をのみ目を丸くしてしまった。 今まで、一度たりとも父が家族に手料理を振る舞ったことなど無かったからだ。普通の立場であれば、それを嬉しく思いすぐにでも料理を平らげてから礼をしに行くのだろう。 しかしながら、ルベリアはそうはしない。 意地っ張りなところがあるルベリアは、どうしても父の手料理を食べる気にはならなかったのだ。 ジルガの口から、「セレドナ様は喜んで食べておられましたよ。まあ、ルリアナ様は……そうはなさいませんでしたが……。セレドナ様もあなた様がこれをお食べになるのを望んでおられます」と言われても、やはり食べようとはしなかった。 とはいえ、このままだと押し問答になってしまいそうなため、とりあえずは料理の乗った盆を受け止ると、ルベリアはこう答える。 「今は、食べる気にならないんだ。でも、安心してよ。後で、ちゃんと食べるから……お願いだ、ジルガ…………」 * その後、ジルガと分かれた後にルベリアはまた部屋に一人きりとなってしまった。 いや、それは間違いだ__とルベリアは思い直す。部屋には、主が戻るのをじっと待っていたナンダがいるからだ。 優しい主思いの【聖鳥】に見つめられ、ルベリアはナンダを抱き締めようとしたのだけれど、その途端に「グゥゥ……」とお腹が鳴ってしまったため余りの恥ずかしさに顔を真っ赤に染める。 さすがに、朝食と昼食をぬくとお腹が空いて堪らない。先程はジルガの手前、意地っ張りな態度をとってしまったものの空腹は限界を越えてしまいそうだ。 父が作ったという手料理へと視線を向けてから、それを食べようと手を伸ばしたルベリアだったが、結果的にそれらを口にすることは出来なかった。何故ならば、その手料理を口にしようとした途端に、すぐ側にいたナンダが全て平らげてしまったからだ。 どうやら、ナンダもお腹が空いていたらしかった。

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