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第13話

* ルベリアにとって長い夜が明け、目を覚ました時には既に己の部屋のベッドの中にくるまっていた。 父やセレドナとの卑猥な行為を目の当たりにし、なおかつセレドナが実の母だったことを知った後に、気を失ってしまったことは何となくだけれども覚えていた。 気だるさに耐えながら身を起こしたルベリアが 、無意識の内に涙を流していたことは枕の染みを見て分かった。 (ああ……そろそろ――朝食の時刻だ……また、ずっとここに閉じ込もっていようか……いや、駄目だ……そんなことをしたら、またしてもルリアナ兄様に責められるに決まってる……それに____) この間のようにずっとベッドの中に引きこもる訳にはいかない理由を、ルベリアはもう一つ思い当たってしまったのだ。 『イ・ピルマから……来訪されたのよ。あなたの婚姻の件で__』 ふっ、と__昨夜の穏やかな笑みを浮かべながら話す母の声を思い出した。 それと同時に、イ・ピルマから婚姻の件で自分に会いに来たという幼なじみめいた王子の笑顔も頭の中に思い浮かんだ。 わざわざ、イ・ピルマから来訪してくれた王子や他の者たちに迷惑をかける訳にはいかない。 それに、 おそらくは共に来ているであろうキャンベル伯爵にも、これ以上は無礼をかける訳にいかないため、まるで重い石を背負っているかの如く気だるい体をゆっくりと起こしてから身支度をし始めた。 ふいに、夢の中での光景を思い出したのは正にその時だ。 * 『……い、おい…………いつまで、メソメソしているつもりだ!?』 ルリアナの声ではない、何者かに声をかけられた光景を思い出す。城の正門側にある花畑でしゃがみながら泣いていた幼い頃の容姿のルベリアに、その男は話しかけてきたのだ。 顔を見ようとしたけれど、それは叶わない。 太陽の光で、影となってよく見えなかったせいだ。 ただ、その男の肌が浅黒くて剥き出しとなっている右肩に深い傷痕があるのは分かった。しかしながら、誰かというのは全く分からない。 城で働いてる者たちの中にも、ましてやルベリアの家族や知り合いの中にも、そんな異様ともいえる容姿を持った者などいないからだ。 夢の中とはいえ不思議に思ったルベリアは、こう尋ねたのだ。 『おにーさん……は……だぁれ?』 『俺か……?俺は____』 * と、謎の男がしゃがみ込んだところで目が覚めてしまった。 その男が何者なのか、何故かさえ分からないけれども、その夢を見た後で少しばかりホッと安堵して気分が楽になったのを覚えている。 これから家族と対面しなければならないという憂鬱な気分は変わりようがない。 しかし、その夢のおかげで少しだけ励まされたため、ルベリアは家族とイ・ピルマの客人たちが待っている【王の間】へ向けて歩き始めるのだった。 *

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