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第26話

* (明日には、ルリアナ兄様に自分の本当の気持ちを告げよう……前みたいに仲良くしたいって__伝えてみよう、とりあえずはそうしてみることが必要だ……) そう思いながら、憂鬱な気分に支配されていた以前とは違って、どことなく暖かい気持ちに包まれているルベリアは名残惜しかったものの、セレドナの部屋から出てノスティアードが待っている部屋へと戻ろうと廊下を歩いていた。 その時、横にある窓の外から眩い光が放たれたのをルベリアは目にして咄嗟に耳を塞いでしまった。 雷鳴だ____。 そのすぐ直後に、窓を激しい雨粒が打ち付ける。 つい先程までは、ミビ・ナルハが打ち上げられるにはうってつけの流れ星が降り注ぐ夜空だったにも関わらず、さほど時間は経っていないというのに、今は雷鳴轟く雨に支配されるまでの悪天候になってしまったことにルベリアは気付いて妙な不安に襲われて逃げるようにしてノスティアードの部屋まで駆けて行くのだった。 * ノスティアードがいるであろう部屋に入った途端、思わず身震いをしてしまうほどの冷たさに襲われたルベリアはガチガチと歯を鳴らしながらベッドの方へと歩いて行く。 確かに、突然雨が降ったのと夜で太陽に照らされていた昼間よりも気温が下がったせいで、ある程度の寒さがあるのは仕方ないとは思った。 しかしながら、それを考慮してみても流石にこの部屋に包まれている冷気は異様なものだと感じた。 そして、ベッドへと進んで行くにつれて更に奇妙な光景が蝋燭の揺らめく炎だけで辺りを照らしていくルベリアの眼前に広がる。 「ノ、ノスティアード様……ッ____!?」 ベッドの側に、ぐったりと倒れるノスティアードの姿が見えてルベリアは慌てて駆け寄った。 「……っ……うっ____ううっ……」 呻き声が聞こえているということは、命に別状はないらしい。しかし、ルベリアは彼が危機に陥っているのをすぐに悟った。 (手が……っ____いや、それどころか体全体までもが……氷のように冷たい……っ……いくら夜とはいえ、いくら何でもこれはおかしい……っ……) と、不安に襲われる最中でルベリアはまたしても異変に気付いた。 「キュウ、ルル……キュルル………ッ……!!」 「え……っ……ナンダ!?ナンダがどうして…っ…ここに……っ……」 窓際に、悲痛そうな鳴き声をあげるナンダの姿を見つけて呆気にとられたルベリアはまるで彫刻のように固まってしまう。 その直後だった____。 あろうことか、ナンダは主人であるルベリアに対して勢いよく跳び蹴りをくらわせると、開けっ放しだった扉から主人をノスティアードの部屋から半ば強引に追い出したのだ。 かつて、キャンベル伯爵に対してくらわせた跳び蹴りとは比較にならない程に強いものだと、ルベリアは瞬時に感じた。 「う……っ____!?」 ナンダの強烈な跳び蹴りをくらった後、その衝撃でルベリアは勢いよく尻もちをついてしまう。そして、すぐに扉が閉まってしまったのを見ると異様なくらいに寒い部屋に取り残されてしまったノスティアードとナンダの身を案じて尻が痛むのも構わずに慌てて駆け寄った。 ドン、ドンと何度も扉を叩いても再び開くことはない。 「ナンダ……ッ……ナンダ!!ここを開けて……今すぐに開けてったら……!!」 今までこんなに大きな声はあげたことはないと自分でさえ驚く程に、張り裂けんばかりに叫んでも、扉は再び開くことはなく――それどころか暫くするとルベリアの身に異変が起きてしまうのだった。

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