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第31話

「は……母上は……母上は何処にいるの……っ……!?母上は……セレドナ兄様やキャンベル伯爵のように……命を奪わせない。それに、ジルガは……太陽みたいに優しかったジルガはそんなことは出来ない筈――だから、母上の居場所を教えて……今すぐに……っ___!!」 キッと鋭い目付きで彼の黒い瞳を見つめながら、精一杯の抵抗を込めて怒りを抑えた、なるべく冷静な声で問いかける。 ここで、取り乱してしまっては敵と化したジルガの思うツボだと感じたのだ。 「母上…………だって?ああ、お前の偽物の母である王妃のことか___。歪んだ家族ごっこで半ば無理やり、お前の母に仕立てあげられた哀れな王妃は……今はおねんねの時間さ。オレがお前の父を色仕掛けで誘惑し、激しく絡み合う場を見て……さぞかし魂が抜けきってしまったんだろうなぁ……そうだ、いいことを思いついた」 ニイッ____と、かつてまだこのようなジルガではなく単なる従者だった頃の昔の彼がルベリアに対してささやかな悪戯を仕掛けてきた時みたいに愉快げに笑う顔を見て嫌な予感がした。 命に関わることではなくとも、自らの身に重大な危機が間近に迫ってきているのをルベリアは愉快げな笑みを崩さないジルガと彼に命じられて此方へ近寄ってくる【ジュマ】を目の当たりにすることによって本能的に感じてしまう。 【ジュマ】のヌメヌメした粘液を纏う羽根が、するりと僕の無防備な胸元の飾りを撫で上げて半強制的に興奮を感じてしまったことによって、その不気味な胸騒ぎは予感から確信へと変わるのだった。 * 「……っ____んっ……ああっ……やめ……っ……やめて……っ……父上……っ……」 もはや、今の父は裏切り者のジルガの操り人形でしかない。 裏切り者のジルガが「お前の息子を快感で狂わせろ……もう一人の息子だったセレドナの時のように激しく犯してやれ」と耳元で命じれば、今までは糸の切れた人形のように微動だにしていなかったというのに、その直後にゆらりと椅子から立ち上がる。 ギクシャクとした不規則な足取りが、なおのこと正気な人間ではなくなってしまったことを思わせるせいで、そんな父の姿など見たくないルベリアはせめてもの抵抗で王冠を奪われた彼から目線を逸らした。 そして、そのまま兵士の骨に埋もれるベッドに捕らわれ状態で尚且つ【ジュマ】によって強引に仰向けにされ、ヌメヌメと滑る羽根に撫でられ続けたせいで熱を帯びた象牙のような肌に覆い被さられてしまうとビクンッと高ぶった身を震わせてしまう。 父も、己も一糸纏わぬ自然なままの無防備な状態だからか少しでも触れただけで変な気分になってしまうのだ。 そのうちに、【ジュマ】の滑りを帯びた羽根のせいで、ぷっくりと膨らんでいる乳首に父の生暖かく生き物のように激しくうねる舌で愛撫されると心では拒絶しようとも反射的に喘ぎ声が漏れてしまう。 月明かりしか光源のない薄暗い部屋の中に、卑猥な水音が響き渡るとルベリアは死以上の屈辱を抱いてしまうのだ。 しかも、それが裏切り者のジルガによって操られているとはいえ家族である父から受けているのだから尚更だった。 「父様……お願いします!!目を御覚ましください……っ____は、母上が……行方不明のうえに生死さえ分からないのですよ。このようなことをしている場合では……ございません……この国の一大事なのです……っ……!!」 情けないことに、淫靡なる快楽に身を委ねつつあるルベリアは声を震わせながら己を押し倒し、屈辱を与えてくる父へと涙ながらに訴えた。 しかしながら、もはや裏切り者のジルガの操り人形と化してしまった父の光の宿らない暗い瞳がルベリアの揺らぐ瞳を真っ直ぐに見据えてくる。 その直後、実の父から押し倒され恥辱を受けるルベリアの様を嘲笑うかのように、少し離れた椅子に座っていて尚且つ血のように真っ赤なワインを飲んでいたジルガがゆっくりと立ち上がる。 そして、そのままベッドの方へと歩み寄ってきて、かつての主人であり友人でもあったルベリアの耳元に唇を寄せると、このように囁くのだった。 「国の一大事だって……?よく言うよ……お前は……このア・スティルの国を――いや、もっと厳密に言うと王族や国民達を……ずっと憎んでいたくせに。お前の父も、今はこの場にいない見せかけの母である王妃も……もうひとりの兄であるルリアナのことも……ずっと、ずっと憎んでいたんだよね?前に、話してくれたんじゃないか」 ルベリアは何も言えずに口をつぐむしかなかった____。 それは、嘘偽りのない事実だからだ。

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