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第40話
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「兄様……いい加減、ご機嫌を直してください。それに、少し反応が大袈裟すぎなのではないですか?まあ、あのようなことがあったので兄様の疑う気持ちも分からなくもないけれど……キルーガはジルガや他のウ・リガの王族達とは違って……その、し……信頼できると思います」
「ルベリア……お前は、色々と無防備すぎるぞ。生前、兄上がおっしゃっていた通りだ。まったく、いくらノスティアードが信用していた奴とはいえ……よりにもよってウ・リガの者に――しかも、あの何ともいけ好かない態度をとるような男に気を許すとは……」
その後、ルリアナによって半ば無理やりキルーガから引き離されてしまったルベリアは仕方なく兄と共に洞窟外の水場のほとりに腰をかけて二人きりで流星群を見続けていた。
キルーガはいたたまれなくなってしまったせあか、すぐ近くにある薪を取りに行くと言ってルベリア達がいる所から少し離れた森へ向かって歩いて行った。
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「兄様……あの洞窟内に、ノスティアード様を一人にして良かったのですか?どうやら、ソナはキルーガと共に……薪を取りに行ったみたいですが____」
「それに関しては問題ない。というよりも……あえてソナとウ・リガから来たキルーガとやらを共にさせ、ノスティアードから離したのだ。あの洞窟内には、ルシュがいる。分身といっても過言じゃないルシュに対してなら、今のノスティアードでも安心できるはずだ――これ以上、アイツに不安をかけさせる訳にはいかない」
その言葉を聞いて、ルベリアは安堵した。
たとえ、理不尽な目に合い記憶を失い――尚且つ精神が退行したせいで子どものようになったとノスティアードに対して自分よりも遥かに上回る愛を抱いている兄がいるおかげで仲間としての絆が失われることはないという安堵感だ。
けれど、それと同時に今まで兄に対して一方的な思い込みにより邪険にしてきたという事実に対して、自分を恥じてしまった。
「ルリアナ兄さん……ごめん。今まで、誤解してた。兄さんは、家族の中で誰よりも……僕を心配してくれてたんだよね――でも、キルーガのことは信じてほしいんだ。彼は、僕に勇気を振り絞るきっかけを作ってくれた人で、なおかつそれを信じてくれた大切な人だから……」
「今夜は……久々にここで二人きりで眠るぞ。ソナやキルーガには、ノスティアードの身に危険が迫らないように見張りしろと伝えてくる。オレも無防備な弟の見張りをすると奴らに伝えてくる……明日からは忙しくなる――お前は鋭気を養うために、せいぜいグッスリ眠っておけ」
ルリアナは、相変わらず不貞腐れた表情を浮かべていたが、その声色は先ほどよりも優しくなっていたため、ルベリアは自然と笑みを浮かべていた。
そんなルベリアをチラリと一瞥した後、仲がギクシャクする前にしてくれていたようにギュッと抱きしめたのだ。
思わず固まってしまったルベリアだったが、それでも悪い気はしない。それどころか、こうしてスキンシップを取るのはかなり久々だったため嬉しささえ覚えた。
そして、ルリアナは少しばかり照れくさそうに笑ってから少し離れた場所にいるキルーガとソナの方へと駆け寄っていき、今夜はルベリアと共に二人きりで眠ることを説明しに行くのだった。
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