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第41話
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夜が明けた。
昨夜の見事な流星群を見上げた晴れの日とは裏腹に、ルベリア一行は吹きすさぶ雷雨の中をひたすら歩き続けていた。
『いいか?これから最初の目的地のアルマナの水場に行く前に、このゴルゴナの谷を通る。今朝、キルーガと話し合ったが……奴は装備を整えるべくゴルゴナの谷を通るのが最善の策だろうと判断した。そして、それを受け入れた。もちろん、何が先に起こるのか……待ち受けているかは誰にも分からないのを覚悟しておけ。その結果、何が起きたとしても気を強くしろ』
今朝、目を覚ました後に洞窟内で皆が集まって話し合ったのは、もちろんこれからの行動に関することだ。
その様を見て、ルベリアは安堵した。
とりあえずは、ルリアナがキルーガを受け入れたように見えたからだ。
無愛想なのは相変わらずだけれど、だからといって、あからさまに敵意を剥き出しにしている訳ではない。
むしろ、黙って話しを聞いているソナの方が心配だ。たまたま気付いてしまったのだけれどが、ルリアナがキルーガと共に話し合っているのを見る度にソナは眉間に皺を寄せて更に唇を噛み締めているように見えてしまった。
ふと、ソナと目が合いそうになったため慌ててルベリアは目を逸らす。何かを話したそうなソナだったが、結局は洞窟を出る前から今に至るまでそのことについて彼から切り出されることはなかった。
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鳴る度に体を震わせてしまうくらいの轟音の雷に混じり、強風とともに降り続けている雨粒が容赦なく顔へと叩きつけられる。
思えば、今まで王宮にいた頃には自分の足で何処かへと出かけたことなどなかった。そもそも、食事や着替えといった生活に必要なことは全て使用人(裏切り者のジルガも含めてだ)がやってくれていた。
つまり、自分の足を使って外へ出向く必要なんてなかったのだ。
だからこそ、さっき皆でこれからの進路について話し合った時も無意識のうちに、『ナンダ達がいるのだからその背に乗っていけば早く着くのに……』と心の片隅で思ってしまったのだ。
慌てて言いかけてしまった言葉を何とか飲み込んだルベリアだったけれど、ルリアナもキルーガも何も言ったりはしなかったが恐らくそんな心情を見透かしていたに違いない。そう思ってしまったのは二人がほぼ同時に険しい目付きで、こっちを見ていたからだ。やっぱり、ルリアナとキルーガはどこかよく似ている部分があるらしい。
でも、ソナだけはルベリアに優しく微笑みかけてくれて少しばかり安堵した。
今は亡きセレドナとの失われたひとときを思い出したせいだった。
ノスティアードは相変わらず黙ったまま警戒心をあらわにして、此方を向くことさえなかった。
それでも、ルベリア達は襲いくる雷雨にも負けずにひたすら歩き続け、やがて直角にそびえ立つ大きな白い岩石に四方八方囲まれた狭谷に辿り着いたのだった。
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