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第4話 たすけてー!なう

咄嗟に鼻に両手をやってピーチスメルを遮るが、遅かった。けっこう嗅いでしまった。 この芳香をもっと嗅ぎたいと思ってしまう。 大抵の鬼はこれでやられた。桃太郎が鬼強い理由は、武器を扱う戦闘能力もさることながら、この、相手の敢闘精神を弱体化させるピーチな匂いが最大の武器なのだ。 俺はこの匂いにやられないよう防護の陣を張っていたはずだが────桃野郎には効かなかったようだ。 「俺の匂いに狂え」 が、決め台詞らしい。 実際に俺の配下な鬼共は、この匂いに狂ってメロメロあっはんうっふん状態で酒池肉林している。 ちなみに鬼共、全員男だからな。 男同士でホモォしまくる部下たちを見て、俺の方が気が狂いそうになったわ。 で、今はもう俺、直に桃臭嗅いでるから本気で狂う一歩手前なわけだ。 そーりゃないぜ桃太郎。お前の匂いチートだぜ。 俺だって、この世界に召喚されちゃって自称神なチャワードからチートな能力もらってここまで鬼ヶ島を維持してきたのに、それを軽く上回るチート野郎にゃお手上げだ。 チャワードは桃太郎を黙認してんのか? チャワードぶっころ。 今度会ったら。会えたら、だな。 今はもう、チート桃太郎に勝てる気が一切しない。 「うぅぅ…」 「黒鬼…美しい黒髪だ。肌は白く…手に吸いついてくる。噂以上に美しいお前が欲しい。俺のものになれ」 男に俺のもの宣言されても、普段ならウゲロロロ死ねクソがって思うだろう。 だが、桃の匂いにやられた今の状態では、桃太郎のその言葉が魅惑の言霊に早変わり。言霊は耳の奥に溶け込んで、頭はくらくら心臓ときめき、更に悪いことに下半身へと響いていく。 「硬くなってきた。効きが良いな。才能あるぞ黒鬼や」 「──っ、貴様が触るからだろう…!」 太腿どころか股の間のブツまで優しく丁寧に撫でられた。しかもわざと性感煽るような手つきで。他にもあっちこっち撫でられた。帯はそのままに着物の裾、衿、袖を乱して開けていくのもわざとに違いないこの痴漢! たすけてー! お巡りさん、こいつ変態です! って、叫ぶ勇気。持てないよね。恥ずかしいよね。 痴漢されても何もできない女子の気持ちが今分かった。 分かったところで、この桃野郎が痴漢をやめてくれるわけもない。 俺は美味しくペロリといただかれた。 自爆スイッチ押す余裕もなく。アーッ!

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