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第2話

国の名前はサザリードといった。 俺の住んでいた日本とはほとんどが全く違う。そうだな、おとぎ話に出てくるどこかの王国といったような場所だった。 人々は電気やガスといった文明の変わりに魔法のような力を使い生活を豊かにしている。生活様式は中世ヨーロッパといったところか?いや、もちろんそれよりはもっとずっと発達しているが、ITといったものが全くないこの国では人々の生活の隅々にやはり魔法が使われている。移動手段にしても連絡手段にしても、何にしてもだ。 俺の言う魔法、魔力という言葉をこの国ではレイティーと呼ぶ。レイティーの力がないものはこの国にはいないそうだ。多かれ少なかれ、人々は皆レイティーを持っていてその力が強ければ強いほど生活は豊かになり、位が高くなる。遺伝的な問題もあるそうで、やはりレイティーの力が大きな者の子孫は大きくなるのだそうだ。 俺はそんな国に、ある日突然呼び出された。レイティーの力によるものだ。一人の人間を違う次元の違う世界に移動させるためには大層なレイティーが消費されるらしい。 俺をこの世界に呼んだとき、30人もの人々が同時にレイティーをフルに使った。そのうちの一人はあれから3日たった今でも昏睡状態らしい。 全ては王の気まぐれだったと俺にある程度すべての事情をこの3日間で説明してくれた男は言った。名をレヴカという。 「俺はあの気まぐれの、乳母兄弟だ。悪かったな」 全く悪びれた様子もなく、悪かったという男。 「…あの、もうそろそろ帰してくれませんか?元の世界に」 今日までの3日間はよく分からないうちに過ぎた。部屋をあてがわれ、ここでの過ごし方を教えられ、服やものを与えられ、レヴカから少しずつ情報を与えられた。 …確かに時々、全てが面倒になって消えたいとか、死にたいとか、全く違う世界に行きたいだなんて思っていたこともあった。でもそれはほとんどの人間がきっと思うことだろう。俺がそう思った時だって、テストがうまくいかなかったとか、友人と喧嘩したとか、親がうるさかったとかそんなときだ。きっと、別に本気で思っていたわけではないんだ。 だって俺は俺なりにあの生活に満足していた。何不自由ない生活に、両親がいて、兄弟がいて、友人もいて、彼女もいて、普通の進学校に通う高校生だった。きっとこのまま大学生になって、社会人になって、いつかは可愛い奥さんを見つけて、子供を授かって、なんて、まるで平凡な人生を送るだろう将来を想像していた。

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