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第8話 ももたろうのステキな仲間

「どうした、ももたろう?」 イヌが立ち止まった。たくさんの旅人が俺たちを見ている。髭が濃い若人から白髪の年寄りまで、全員が男だ。 ここは俺が住む村ではない。あまり淫らなことをくちにしないほうがいいかもしれない。性なる特訓を堂々と覗く俺の村とはちがって、硬派な人間だっているはずだ。 俺は周りに聴かれないよう、小声で言った。 「……出てきた」 「なにが?」 「お汁が」 「え!? ももたろう、おまえ! 抱き上げられだけで、お汁を出すのかよ? どんだけ淫乱なんだよ!?」 「ちがうよ! イヌが俺のなかにぶっぱなしたお汁だよ! って、あ」 イヌと俺の周りにいる旅人たちは、ひそひそと会話しながら行き交う。俺と目が合うと皆、さっと視線をそらした。 「……こいつら、外でお汁ぶっかけあったのかあ」 「ぶっかけたんじゃないって、なかだよ、なかに出したらしいぜ」 「ふたりとも男前なのに……」 「顔が好みだからじゃないよ、きっと。あのケモ耳男、かなりうまそうだもんな……」 「お尻丸出しの子も、肌が綺麗だもんなー」 「ああ、ふたり旅は楽しそうだなあ」 イヌは俺の頭をぽんぽんと撫でた。 「ははは。気にすんな、ももたろう! ほんとうのことなんだから、堂々としてろ!」 「恥ずかしくないよ、これくらい! 村ではみんなに見られながら特訓をしていたからね」 「お、そうか。……それってさ、危なくなかったか?」 「どこが?」 「おまえの魅力にまいった村人が、おまえを襲うとか……」 「あ、大丈夫。おじいさんが手作りのイボつき棒を定期的に、村人のお尻に差してまわっていたんだ」 「へ、イボつき!? 尻に差す!?」 「うん。意味はよくわからないけれど、『今夜も息子弄りの普及に勤めるとするか』って、おじいさんは夜な夜な出かけていたんだよ」 「そうかあ……そうまでして、ずっとももたろうの尻を守ってきたのか、じいさんは。それなのに……俺があっさりいただいちまったなあ……」 「イヌは、おじいさんの言うとおりだったよ!」 「へえ、じいさんは俺のことをなんて言ってたんだ?」 「ももたろうのステキな仲間、だってさ!」 イヌの顔が、どんどん真っ赤になっていく。 「じいさん……。へ、お世辞かよ」 「おじいさんはお世辞なんか言わないよ」 「は、そうか。……ああ、そうだよ! 俺はおまえの仲間になるために、都で修行したんだ! 息子弄りなんかする暇ないくらい、腰を振っていたんだぜ?」 「さっきから気になってるんだけど、息子弄りってなに?」 「へえぇっ!? おまえ、そんなことも知らねえの? ……そうか、だからいつも欲求不満になるのか……よし、それも宿に着いたら教えてやるからな!」 イヌは走り出した。すぐに速度を上げる。 「イヌ、速いって! また、お汁出ちゃう!」 「出たら出たでいいって! またいっぱい注いでやるから! 欲しがりももたろう!」

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