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第17話 正式(?)な夫婦の契り
「じいさん、お願いだ!」
「おじいさん、お願いします!」
俺は家に戻ると、イヌとともに正座しておじいさんに頭を下げた。夫婦になる許しをもらうために。
「むむむ……」
おじいさんは腕を組んで、あぐらをかいている。うつむいて、なにやら考え込んでいるみたいだ。
「じいさん! 俺、ももたろうと一生添い遂げる! だから、だから……」
「イヌ。おまえのおかげで、ももたろうが鬼に抱っこされなかった。その手柄は褒めてやりたいが……。ももたろう。ほんとうにいいのか? ひとりのお汁で、おまえは一生満足できるのか?」
「できるよ!!」
俺はイヌにしがみついた。
「俺、イヌのことがだいすきだから!」
「ももたろう……!」
イヌが目を潤ませている。
「イチモツはちょっと細いけど」
「う」
「俺の身体をたくさん舐めるのは勘弁してほしいけど」
「うう!」
俺の言葉にイヌが固まっている。しまった。イヌ、ショックだよな……。
「ごめんなさい」
俺はイヌの腕にすりすりした。イヌが俺の頭を撫でた。
「ははは。……自覚しているから、かまわないぜ」
「でも、でも! こんなに誰かを好きになったのは、初めてなんだ。この先、イヌ以上に好きな人は現れないって、俺わかる!」
おじいさんは呻いた。
「ももたろう……!?」
「おじいさん……約束、破ってごめんなさい。俺、帰ったら、おじいさんに抱っこしてもらうって言っていたのに。あのときは俺、わからなかったんだ。ずっといっしょにいたいって人に出会えるなんて……」
「じいさん。俺、ももたろうを幸せにするから、頼む!」
「……よし! そこまで覚悟ができているのなら、夫婦になれ!!」
「ありがとう、おじいさん!」
「やったな、ももたろう!」
俺たちは正座したまま抱き合った。
「ところで、夫婦の契りはいつ交わすことにするんじゃ?」
「あ、あー。それがもう俺たち済ませちまって……」
「ほう。宿でか?」
「う、ううん。海岸で……」
「か、海岸!?」
「すまねえ、じいさん! 鬼ヶ島の海岸でヤっちまった!!」
「このおおおぉぉぉ!!」
おじいさんは素早く立ち上がる。三和土 にあった草履を取った。
イヌの頭を叩こうとするので、俺は必死で止めた。
「イヌ! 夫婦の契りを青姦で済ませるとは……ふしだらにもほどがあるぞ!!」
「ひええぇぇ!? おっしゃる通りです!」
「おじいさん、おじいさん! 無理矢理じゃないから。心配しないで!」
おじいさんは草履を畳の上に置くと、正座した。
「ももたろう。イヌ」
「はい!!」
俺たちは並んで正座した。姿勢を正す。
「これから長い人生をともにするのだから、夫婦の契りはたいせつな行為なんじゃ。たとえ夫婦になる前に、何回も抱っこしていたとしてもな。わかるか?」
「はい」
「おう」
「よろしい。では今夜、この家で夫婦の契りをせい!」
「へっ、俺の家じゃなくて?」
聞き返すイヌに、おじいさんは笑ってうなずく。
「そうじゃ。なにかと準備があるからのう……ふふふ」
ん、おじいさん。なんか企んでいるような笑みだな……。
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