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序章

「……んぐぅっ!」  ぐぐもった呻き声が静かな室内の空気を揺らす。  体を引き裂くような痛みに、貴司は一気に覚醒した。自分自身の置かれた状況を理解できずに暴れるけれど、耳障りな金属音がカシャカシャと聞こえてくるだけで、思い通りに自分の四肢を動かすことはかなわない。 「起きた?」  聞こえてきたのは貴司がよく知る人物の声で、のんびりと響く低い声音は、こんな状況下にも関わらず、優しいなどと勘違いしそうな甘さを内に含んでいた。 「うぅっ」  何かに口を塞がれているため、制止を求めることもできず、アナルに感じる強い痛みに体がカタカタと震え出す。 「痛い?」  尋ねてくる声に恐々と視線を移動させていけば、開かれた脚の向こう側には見知った彼の姿があり、同時に貴司は自分が置かれている状況を理解した。  今、貴司はベッドの上におり、全ての衣類を取り払われ、太股と足首とを革製の太い拘束具により一括りにされている。両手首は頭の上で一纏めに拘束され、そこから伸びた鎖は頭上の柵を連想させるようなベッドヘッドへと繋がれていた。 「ねぇ、辛い?」  労わるようなその声に、首を何度も縦へと振れば、聖一は少し眉根を寄せ、それからニコリと笑みを浮かべる。 「ごめん。だけど、辛くなければお仕置きにならないでしょ?」 「んぐぅ―!」  声と同時にアナルを埋める異物を捩られ、貴司は瞳を大きく見開き身体をガタガタと震わせた。  ――痛いっ!  縋るように聖一を見るが、視線が合ってもその手は止めて貰えない。だから、ひたすら鋭い痛みに悶え、耐えることしか術がなかった。 「可哀相、慣らしてないから血が出ちゃった。だけど、貴司さんが悪いんだよ。俺から逃げようとするから」  その表情は変わらない。だけど、聖一の中の怒りは大きな物なのだと、肌で感じた貴司の震えは更に大きなものとなる。再会しれからこちら、『貴司』ではなく『貴司さん』と呼んでくるのは、昔を思い出させるためなのか、それともただの気紛れか……そんな思考が脳裏を掠めるが、現実からの逃避はそう長くは続けられなかった。 「考えごと? 余裕だね。だったら……」 「うぅっ!」  アナルに挿し入れられた異物をゆっくりと引き抜かれ、排泄感に似た感覚に貴司の体へと鳥肌が立つ。そして、カチリという無機質な音が耳に響いた次の瞬間。 「んぐうっ!」  挿入された異物が突如ブルブルと振動を始め、その衝撃の大きさに、思わず貴司は悲鳴をあげた。そこから生まれる痺れるような痛みから、貴司は必死に逃げようとするが、カシャカシャと鎖の音が虚しく耳へと響くだけで、拘束は少しも緩まない。 「う、うぅ!」  ――もう、やめてくれ!  せめて、口だけでも自由になれば伝えることができるのに、今の状態ではできやしないから、懇願するよう見つめると、そんな気持ちを察したように指で唇をなぞってきた。 「ボールギャグとバイブ、取ってあげようか?」  貴司が必死に頷けば、聖一は笑みを深くするけれど、そんな顔を見せる時には、ろくなことがないことを貴司はよく知っている。 「うーん……やっぱりダメ。話は後でゆっくり聞いてあげる。時間なら沢山あるし」 『だったら聞くな!』と貴司が心の中で悪態を吐いた時、今度はバイブをグルグルと掻き回すように動かされ、遂にはそれが前立腺を掠めてしまう。

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