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「気持ちいい?」
口を離した聖一に問われ、貴司がゆるゆる首を横に振り彼の言葉を否定すると、空いている手が後頭部へと回され口枷が外される。
「ゴホッ……ゴホッ」
溜まった唾液を飲み切れず、咳込みながらも貴司が制止を求めようとして口を開くと、ずっと体内を蝕んでいたバイブがズルリと引き抜かれた。
「あっ……あぁっ!」
思わず口を突いた嬌声を、喉を鳴らして笑った彼が、アナルの淵へと指を這わせる。
「腰揺らして、ここ、こんなにヒクつかせて……誘ってるようにしか見えないんだけど」
「違う」
「違わない。貴司さんの喘ぎ声聞くために、口の外したんだから……いい声だけ聞かせて」
その口角が、愉しそうな弧を描く。
「セイ……止めろ!」
「ダーメ」
言いながら、勃ちあがっている貴司のペニスの根本を紐で手早く縛ると、両膝を掴み、それを大きく割り開き、肩へつくくらい押しつけてきた。そしてすぐさま、剥き出しになったアナルへと、宛てがわれた物の感触に貴司の体へ鳥肌が立つ。
「っ……セイ…止めろ! もう、こんなのは……」
――嫌なんだ
そう続くはずだった貴司の言葉は、意味をなさない音に変わる。
「いっ……あっ…あぁっ!」
血液と、多分バイブに塗られていたローションのぬめりを借りて、聖一のペニスがゆっくり体内へと侵入してくる。細身に見えて体格のいい彼のペニスは大きくて、ただでさえ、受け容れるのは困難なのに、こんな状況ではきっと本人も痛みを感じているはずだ。
「あっ、ああっ!」
目の前がチカチカする。痛みを覚えているはずなのに、どこか遠く感じるのは、脳が現実逃避を始めてしまっているからなのだろうか?
「久々だからキツイな。けど、ちゃんとここは覚えてるみたいだ。美味しそうに飲み込んでく」
「違うっ……止めろ」
ある程度まで異物を入れると、肛門が伸縮するのは生理的な現象だ。都合良く解釈するのは止めて欲しいと思った貴司が、挿入の息苦しさを堪えながらも睨むように見据えると、涼しげな笑みを浮かべた彼と正面から視線が絡んだ。
「こんなに勃ててんのに、何言ってんの? 認めちゃいなよ。そうしたら優しくしてあげる」
甘く囁く声と裏腹に、その瞳は確かな欲情を滲ませていて……底知れぬ恐怖を感じ、飲み込まれたように声を出せなくなった貴司の体が、情けなくもビクリと震える。
「そう……それでいい」
近づいてきた薄い唇が、触れるだけのキスを落とした。
「ん……ふっ……あぁっ!」
途中から、一気にペニスを突き入れられ、貴司の口から悲鳴にも似た嬌声が上がってしまう。しかも、的確に良い場所ばかりを穿つから、痛みよりも強い快楽が貴司の体を支配し始めた。
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