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「ぅっ……」
ぼんやり意識を戻した貴司が感じたのは、焼けつくようなアナルの痛み。眉間へと皺を寄せながら、ゆっくり体を動かしていくと、節々がギシギシと鈍い痛みを訴えかけてきた。
――ここは?
視線だけを彷徨わせれば、そこは随分と広い空間で、壁は白く、カーテンや自分に掛けられたシーツは淡い緑色をしている。状況が上手く飲み込めないまま起きようとした貴司だが、脚を動かすとジャラリと金属音がしたから、驚きに目を見開いた。
「……なんだ?」
掛けられているシーツを捲ると、足首には金属の枷が嵌められていて、そこから伸びた細い鎖がベッドの支柱へ繋がれている。
――そうだ……俺は。
意識を失う前に受けていた仕打ちを瞬時に思い出し、真っ青になった貴司の体は止めようもなく震えはじめた。
――どうしたら。
どうせ外れるはずなどないが、それでも他にすることがないから、ベッドの上へ座り直して足枷へと手を伸ばす。そこで初めて自分の手首に包帯が巻かれているのに気がついた。
「……何なんだ」
思わず漏らしてしまった声は思ったよりも大きく響き、発した自分が驚いてしまう。自分で傷を付けておいて、丁寧に手当をする心情が分からない。
――いつから、解らなくなったんだろう?
今しがた、解っていると思っていた頃の懐かしい夢を見たけれど、案外最初から彼を理解などしていなかったのかもしれない。そう考えた貴司が俯き自嘲気味に微笑んだとき、カチャリと大きな音を立てから部屋の扉が開かれた。
「起きてたんだ、調子はどう?」
聞き慣れた、甘い響きを帯びたその声に、他の人には判らないであろう僅かな棘を感じた貴司は、眩暈がするほど緊張するが、掌をギュッと握り締めてから声の主を真っ直ぐ見据えた。
「いいはずないだろ」
できるだけの冷静さを装って声を絞り出すけれど、どうしても語尾が震えてしまい、情けなさに貴司は唇を噛み締める。
「だよね、いいはずないよね」
歩み寄ってくる聖一と距離を取るようにして、体が勝手に後退ってしまうけれど、ベッドへ乗り上げた彼は容易く貴司の体を捉えてしまう。
「っ!」
「震えてる。俺が怖いの?」
耳元へ囁く低い声音で、貴司は自分が震えていることに気がつく。逃げようとして身を捩れば、拘束してくる逞しい腕に更なる力が込められた。
「いっ!」
「正解。俺、まだ怒ってるから」
聖一は、片方の腕を背後へ動かし貴司のアナルを探り当てると、体を包むシーツの上から長い指を突き立ててくる。
「やめろ……離せ!」
あまりの痛みに叫んだ貴司はグリグリと動く彼の指から逃れようとするけれど、力の差は歴然で、些細な抵抗を愉しむように聖一が喉の奥で笑った。
「ごめんなさいは?」
「……俺は、悪くない。これは……犯罪だ」
「犯罪……ね」
ポツリと呟いた聖一の指が後孔の辺りから離れ、貴司が僅かに体の力を抜いた途端、今度は広いベッドの上へと仰向けに倒されてしまう。
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