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 ――これは、脅迫だ。 『願いを一つだけ叶える』 その言葉に暗に含まれた意味を貴司は読み取ってしまった。全てを知られている以上、自分を助けてくれた人達に迷惑をかけるような選択ができるはずもない。 「ごめん……なさい」  目を閉じて、掠れた声で囁くと、一瞬の間を置いてから「何が?」と聞き返された。 「……逃げて、ごめんなさい」  できるだけ感情を押し殺し、謝罪の言葉を再び紡げば、聖一の手が手首から離れて髪の毛を軽く撫でられる。 「セイの言う通りにするから……だから、誰にも手を出すな」  懇願しながら貴司が薄く瞼を開くと、そこにはこちらを見下ろしながら、微笑む彼の綺麗に整った顔があった。 「貴司さんは賢いね」  上から降りてきた言葉に、貴司は唇を噛み締める。聖一自身の口から誰かに危害を加えると言われた訳ではないけれど、実際のところ、貴司の答えは決められてしまったようなものだ。逃げることができないならば、せめて誰も巻き込みたくはないと考えてしまうことまで、計算の内なのだろう。 「お前は……狡い」  思わず口からでた言葉。それを受けた聖一は、軽く首を傾けた後、その表情から笑みを消した。 「狡いのは、貴司だろ」  低く、唸るように放たれた言葉に、体がガタガタと震え出す。いつも微笑んでいる聖一の、常ではない表情に、突如貴司は忘れかけていた情景を思い出した。  ――この瞳だ。この瞳が俺を……。  真っ直ぐ自分を見下ろしてくる彼の瞳に囚われたように、目を逸らすことができなくなる。そして同時に、心の中を見透かされているような感覚に陥った。 「震えてる。もしかして怖かった? そんな顔しなくても大丈夫だよ。ちゃんと全部言えたら、優しくしてあげる」  再び口角を上げた聖一が、髪へ差し入れた指へ力を込めてきたため、諦観した貴司は瞼を降ろして体を硬くする。  ――今は、受け入れるしか。 「口、開いて」  言われた通り貴司が唇を薄く開いたその瞬間、まるで呼吸を塞ぐかのように、彼の唇が重ねられた。 「んっ……んうぅ」  入り込んできた彼の舌先に自分の舌を絡め取られ、捏ねるように弄ばれ、熱さとざらつくような感触に抜けるような吐息が漏れる。さらに、チュクチュクと舌を吸いながら、頭を掴んでいない掌を胸へと移動させた聖一が、震えから少し硬くなっている尖りを指で確認し、迷うことなくそこを摘み上げた。 「んっ……ふうぅ―!」  痛みに上がった貴司の声は彼の唇に飲み込まれ、深くまで入り込んできた舌に口腔中を蹂躙され、飲み込みきれない唾液が頬を伝い落ちる感触に、感じてしまった貴司の体がピクリピクリと上下する。  ――こんな……なんで。  いつの間にか、体の震えは止まっていたが、代わりに自分を支配し始めた淫靡で甘美な感覚に、混乱した貴司が思わず聖一の腕を掴んだ刹那、無造作にシーツを払われ直に乳首を抓られた。

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