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「心配した。あの時ちゃんと注意して、連れて帰って来れば良かったって後悔してた。でも俺は、お前のことに、どこまで入り込んでいいのか分からなくて」 「貴司さんにだったら、どこまで入り込まれてもいい。心配させてごめんなさい。一緒にいたの、従姉妹だから」  従姉妹という雰囲気ではなかったと貴司は思う。だけど聖一がそう言うならば、きっとそうなのだろうと貴司は思い込むことにした。 「分かった、セイを信じる。色々、興味がわくのはしょうがないけど、夜遊びとかはまだ早いと思うから」 「うん、もうしない」  甘えたような声と共に、聖一の腕に力が篭る。 「もう分かったから、離せ」 「もう少し」  拘束から逃れようとしてジタバタ手足を動かすけれど、首元に顔を埋める彼にそう言われ、聖一もまた不安だったのかもしれないと思った貴司は、体の力を少しだけ抜いた。  それから、少しの間彼に身を任せ、望むようにぴったりとくっついていたけれど、だんだんと暗闇に目が慣れると、男二人が抱き合っている今の状態に、流石に羞恥を覚え始めた。しかも、クーラーもないこの部屋では、いくら窓から夜風が吹き込んでくるとはいえ、かなり暑い。 「セイ、そろそろどいて……暑い」  限界だと思った貴司が口を開くと、「ん」と鼻を鳴らした聖一が、何を考えたのか突然首許へと吸いついてきた。 「ちょっ……セイ! やめ……んぅっ」  突然首へと感じた痛みに思わず出した大きな声は、素早く口を塞いだ彼の掌へと吸い込まれ、そのまま、ペロペロと舌を首へ這わされて貴司は完全に混乱する。 「んぅっ!」  どうしてこんなことをしてくるのか分からなくて、バタバタと足を動かすけれど、彼はビクリとも動かない。力ではもう聖一に敵わなくなってしまったことを、まざまざと思い知らされた。  ――なん……で?  人肌が恋しいというのが理由なら、この行為はその範疇を超えている。それに、今されている行為が性的な意味合いを含んでいることは、いくらそちらの方面に疎い貴司にだって、分からないはずがなかった。 「ふっ……うぅ!」  背筋を這うゾワリとした感覚に、体中へと鳥肌が立つ。このままではいけないと考え、動揺し過ぎて動かせなかった腕を何とか持ち上げて、彼の背中をドンドンと叩くと、ようやく首から唇が離れた。  それから、ゆっくり体を起こした彼は、貴司の体を跨ぐように膝立ちになると、真っ直ぐこちらを見下ろしてくる。暗闇の中で朧げにしか見えないけれど、いつもとは違う彩を放つ双眸に、囚われたように貴司は視線を動かせなくなってしまう。 「キスしても、いい?」  突然、彼の口から囁くように告げられた言葉に、頭の中が真っ白になった。  突拍子もない発言に、聖一はどうにかしてしまったのかもしれないと、急に貴司は心配になるが、口は掌で塞がれているから言葉を発することができない。 「貴司さんが嫌ならしない。けど僕、貴司さんが好きだから……キスしたい」  信じられない告白に、貴司は瞳を大きく開いた。  ――冗談……だよな。  そう言いたかったけれど、口は塞がれてしまっているし、たとえ言葉を紡げたとしても、そう告げることを許さないような雰囲気が、聖一の周りに漂っている。

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