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『お世話になりました』  最期にそう告げ頭を下げた時、バツの悪そうな顔をした叔父と、下を向いたままだった叔母の姿に『もうここへは帰ってきちゃいけないんだ』と貴司は一人理解した。  そしてようやく手に入れた、一人だけの……誰にも気兼ねしないで過ごせる場所。 『貴司さん』  いつの間にか、そこへと入り込んだ猫のような少年は、いつしかかけがえのない存在へなっていき、それが無性に怖くなって手を離そうとした愚かな自分は、彼の前でみっともなく倒れてしまった。 『貴司さん』  ――声が、聞こえる。  覚醒が近いのだろうか?  目が覚めたら『心配かけて悪かった』と聖一に謝ろう。  だけど、今はもう少し。 「貴司」  更に深い眠りの中へと堕ちようとした貴司の耳に、突如響いてきた低音は、今まで聞こえていた声よりもずっと大人びていたけれど、間違いなく聖一の声だということは、なぜかはっきりと認識できた。 「ねえ……起きて」  声と同時に腰の辺りを掴まれたから、擽ったさに体を捩って抜け出そうとするけれど。 「いっっ…あっ……あうぅっ!」  刹那アナルを襲った衝撃に、たまらず貴司は指でシーツを掻きむしる。 「なかなか起きないから我慢できなくなっちゃった」 耳許へ低く囁く声に貴司は激しく動揺した。  ――俺は、アパートで倒れたはず……なのに。 「まだ目が覚めない? うなされてたけど……悪い夢でも見てた?」  心配そうに尋ねる声とは裏腹に、彼の猛ったペニスは俯せの貴司の体を、背後から容赦なく貫いている。 「あぅっ……や……やめっ!」  ――全部……夢だった?  何処までが夢なのか、或いは全てが夢だったのか、懸命に思考を巡らせようとするけれど、意識はかなり混濁しており何が何だか分からなかった。 「やっ……いたぃ…あっ…ああっ!」  傷口が開く感覚に、体中へと鳥肌が立つ。何とか前へ逃れようとして指先にギュッと力を込めるが、後ろから伸びた聖一の手に、逃がさないとでもいうように手首を強く抑え込まれてしまい、弱々しくシーツを引っ掻くことしかできなくなってしまった。 「ねぇ、どんな夢見てたの?」  覆いかぶさるようにして、耳元へ低く囁いてくる言葉の意味も理解できず、今の状況にもついていけない貴司だから、アナルを襲う激しい痛みから逃れることしか考えられなくなってしまう。 「……わかんなっ……あうぅっ」  それでも何とか言葉を返すと、ペニスの全てを貴司の中へと捻じ込んできた聖一が、そこで一旦動きを止めた。 「何回も、俺の名前呼んでた」  まるで、内緒話でもするみたいに、優しい声音で耳打ちをされ、無意識の内に貴司の体から徐々に力が抜けていく。  ――あれは……夢?  今まで見ていた全てが夢で、今感じている痛みが現実なのだろうか?  長い夢を見ている中で、境界線はかなりあやふやになっていた。だから、現状を理解するために、貴司は背後を振り仰ごうとするけれど、押さえ込まれたこの状態ではどうすることもできなくて。 「ひっ……ああぁっ!」  聖一の腕が腹の下へと差し入れられ、そのまま、彼の胸へと背中を預けるような形に体をグイッと引き起こされて、貴司はたまらず悲鳴を上げた。

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