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「ぐっ……うぅっ」  深くなった接合により、胃がせりあがるような感覚がして、込み上げてきた強い吐き気に涙を滲ませ小さく唸る。  ――痛い、苦しい。  それだけしかない行為のはずが、チラチラと見え隠れしはじめたもう一つの感覚に、貴司の頭は激しく混乱してしまう。逃れるために、腰を浮かせて体を捩れば、素早く動いた彼の掌にペニスを強く握り込まれた。 「やぁ……やめろっ」 「どうして?気持ち良さそうだよ」 「ちが……」  混乱している貴司のことなどお構いなしに、聖一は、掴んだペニスを上下へ緩く扱き始める。 「なっ、やぁ……あぅっ!」 「体は素直だね。貴司も早く認めちゃえばいい。気持ちイイって」 「ちがうっ」 「違う違うって貴司はいつもそればっか。こんなに涎垂らして、ここだって……ほら」 「ひっ!……あっ…ああっ!」  尿道口へと爪を立てられ、同時に空いている方の指が貴司の胸へと伸びてきた。そして、そこへと彼が触れた途端、生まれたのは焼けつくようなジンジンとした鋭い痛み。そして、体の芯へと直接流れ込んできたのは、強い……紛れもない快感だった。 「まだ腫れてる。こんなにされても貴司は気持ち悦いんだ」  クスリと笑う聖一の声と、耳朶をザラリと舐める舌。  ――腫れてる? どうして? 「ほら、綺麗だよ」 「あっ……ああっ!」  引き攣るような痛みに震え、ゆっくり視線を落とした貴司の瞳に映りこんだのは、赤く腫れた自分の乳首と、そこへ通された銀色のリング。途端、甦ってきた酷い記憶に背筋を冷たいものが走った。 「……外せ」  こんな物を付けられて、黙ってなどいられない。  ――早く、取らないと。  手を胸元へと移動させ、震える指先で掴まれていないピアスへ貴司が触れた刹那、まるでそれを待っていたように突如聖一が律動を始めた。 「っ……ひっ……やあぁ!」  容赦のない突き上げに、ピアスに掛かった自分の指が乳首を下へと引く形となり、痛みに前へとのめった体は、聖一の腕に引き戻される。 「いたぃ……やめて、お願い……ああぁ!」  慌てて胸から指を離した貴司が空しく宙を引っ掻くと、ペニスを離した聖一の指がもう片方のリングへと掛かった。 「そのうち、ココだけでイッちゃうようにしてあげる」 「あぅっ……やぁ!」  今度は左右のピアスを引かれ、貴司は後ろへ大きく仰け反る。そのまま、狙い澄ましたみたいな動きで前立腺ばかりを穿たれ、ガクガクとまるで操り人形のように何度も揺さぶられる内、目前の光景の中に白い光が混ざり始め、遂には……自分の放つ嬌声の合間に、途切れ途切れの誰かの声が幻聴みたいに聞こえはじめた。 『もう会えないなんて、僕は嫌だ』  ――これは? 『高校生になったら、もう一度だけ僕に会って。それでダメならもう好きだなんて言わないから』  ――あの時だ。  つい先ほどまで見ていた夢。その続きの光景が、痛みと愉悦の狭間で揺れる貴司の虚ろな頭の中へと、酷く鮮明に映し出された。  意識を断った貴司が次に目覚めたのは病院で。  握られた手が温かくて。  見つめてくる色素の薄いその瞳は、泣きそうに潤んでいた。

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