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――これじゃ、堂々巡りだ。
ふうっと息を吐きだした貴司が抱え込んだ膝へと頭を預けると、サラリとしたローブの布地が頬に当たって気持ち良い。そうやって、窓の外へと広がる空を瞳の中に映す内、昨晩も散々抱かれた体が休息を求めているのか、瞼が次第に重くなってくる。
――コーヒー……飲んだのに。
ぼんやりと、そんなことを考えるけれど、本人の意思などお構いなしに、睡魔は体を包み込む。
――また、見るのだろうか。
完全に意識が遠退くその寸前、貴司はよく回らなくなった頭でぼんやりと考えた。
最近は、記憶の断片を繋ぎ合わせた夢をよく見る。いくら見たくないと思っても、こればかりはどうにもならない。
辛くて、
幸せで、
もう取り戻すことができない過去。
見る度に、胸を掻きむしりたいような衝動に駆られるのは、きっと逃げてばかりの自分へ苛立ちを感じているせいだ。
――セイ、お前を狂わせたのは。
今の状況から考えると、きっと自惚れなんかではなく、その原因の一端は確かに自分にあるのだろう。
――何とかしなければいけない……俺が、自分で。
途切れ途切れの意識の中でそんなことを考えるけれど、襲ってくる眠気に抗うことは既に困難で、ソファーに座った状態のまま、深い眠りへと堕ちて行く。だから、学校から帰ってきた聖一が、その頭を愛おしげに撫でたことも、眠りから覚めないようにそっと薄掛を被せたことも、貴司は知らない。
聖一が、その頬へと優しくキスを落としたことも。
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