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「俺、知ってるよ。貴司さんの本当の気持ち」
自信有り気に囁いた彼が、首元へ指を伸ばしてきて、ネクタイをスルリと外した。
――本当……の?
一体、何を知っているというのだろう?
自分にすらよく分からないこの気持ちの正体が、彼には分かるというのだろうか?
「スーツ、似合ってる。けど、もう少し明るい色がいい」
唇同士が触れ合うくらいに顔を近づけた聖一が、ワイシャツのボタンを器用に片方の手で外していく。解放された貴司の左手は動かせるはずなのに、彼の瞳に射抜かれたように動かすことができなくなった。どうやって宥めるのかを考えなければならないのに、反応を示してしまった下半身を気にする余り、頭が全然働かない。
混乱し、数秒の間されるがままになっていたけれど、シャツの袷から挿し入れられた指が胸へと触れたその瞬間、体がビクリと大きく震えた。
「……止めろ」
思い出したように抵抗するも、聖一によって軽々と俯せに返されてしまい、そのまま手早くネクタイで腕を一纏めに縛られてしまう。
「セイ!」
焦った貴司が思わず叫ぶと、背後から伸びた彼の指先が口の中へと挿し込まれた。
「っふ……んぅ」
「静かにしないと、回りの部屋に聞こえちゃうよ」
耳たぶを甘噛みされて貴司の体が総毛立つ。逃れようと前へ進むと腰を強く引き寄せられた。
いつの間に、こんなに力が強くなったのだろう?
外見は、以前とだいぶ変わったけれど、中身は変わっていないように感じたのは、勘違いだったのだろうか?
「分からないみたいだから、教えてあげる。ゆっくり、時間を掛けて」
初めて聞く艶を纏ったその声に、貴司の体が無意識の内ガタガタと大きく震え出し、その反応を見た聖一が喉の奥でクスリと笑った。
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