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「怖がらないで。貴司さんが分かってくれたら、すぐに外してあげるから」
耳元へそう囁くと、貴司が首を横へと振った。逃れようと必死に足掻く彼の口から指を抜き、両手で体を持ち上げてからベッドの上へと仰向けに倒す。更に、部屋の中を物色して布テープを探し出すと、その隙に立ち上がろうとしていた貴司をもう一度押し倒し、腹の上に馬乗りになって「止めろ」としか言わない口に、ハンカチを詰め込んでから布テープを貼りつけた。
「んーっ!うぅっ」
バタバタと動く足からズボンを取り去ると、更に激しくなった抵抗を抑えるために、足首と太股を布テープでグルグルと固定する。
「ごめんね。ホントは貴司さんの声聞きたいけど、このアパート壁薄そうだから、我慢して」
言いながら頬を撫でれば、何かを訴えかけるようにその瞳が涙で潤み、聖一を拒絶するように首が何度も横へと振られた。
「嘘はダメだよ」
言いながら、鼻を摘むと顔が真っ赤になってきて、頃合いを見て離してやると、必死に鼻で呼吸をする。その姿がたまらなく愛しいなんて、自分でもおかしいと思う。だけどこうして呼吸さえも支配することで、自分なしでは生きていられないようになればいいのに……と、聖一は思ってしまった。
それほどに、逢いたくて、触れたくて、ずっと想い続けていたのだ。
「貴司さんは俺が好きだよ。だってほら……」
ピンク色に染まった頬へと口づけを落とした聖一が、ボクサーパンツの上からそっと股間に指を這わせると、貴司のペニスは確かに質量を増していた。
「体のほうが正直だ」
目を瞠った貴司の股間をヤワヤワと揉んでやると、ぐぐもった呻きを漏らして体をヒクヒク上下させる。
「好きだよ」
生まれて初めて『欲しい』と思った。好かれたいと強く思った。本当は、貴司の気持は分からないけれど、自分を止めることもできない。ここまできたら後に引き返すことはできないし、引き返すつもりなんて聖一にはさらさらなかった。
***
「ん……んぅっ!」
繰り返し鼻を指で摘ままれる苦しみに喘ぎもがきながら、酸欠になってしまった貴司は逃れようとして懸命に首を動かすけれど、そんな些細な抵抗など全く通用しなかった。もし聖一が、このまま指を離さなかったら、死んでしまうのではないか? という不安に駆られ、震えは酷くなる一方だが、だんだんと霞む意識の中、股間を優しく嬲られている感覚の方を、体は拾い上げてしまう。
「んぅっ……うぅ……」
「貴司さん、可愛い」
滲み出した涙の膜の向こう側、綺麗に微笑む聖一に、『止めろ』と一言伝えたいのに、塞がれた口はぐぐもった音を出すしかできなかった。
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