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 ――こんなに……傷つけていたなんて。  目の奥のほうがツンと痛む。時間が全てを解決すると思っていたのに、時間は彼の心を捩曲げ、彼に対する自分の気持を更に大きく育て上げた。  ――どうしたら、伝わるんだ。  視界がさらに滲んでくる。中途半端に高められ、熱を持ってしまった体をどうすることもできないまま、せめて涙は見せないように貴司は瞼をギュッと閉じた。  それから少しの後、太股へと突然触れた硬くて冷たい感触に、貴司は思わず声を上げると、その瞳を大きく見開く。 「ん、んぅっ」 「動かないで」  冷静な声でそう告げてくる聖一の方へ視線を向けると、キッチンに置いてあった大きめの鋏を右手に持った彼が、それを内股へと押しつけていた。  ――な……んで?  行動の意味が分からない。本能的な怯えに震える貴司の腿を撫でた聖一が、あろうことか、鋏で下着を迷いも見せずに切り始めた。 「んうぅっ!」  鋏が素肌に触れる恐怖と、下着を取り払われる羞恥に、貴司の肌が薄赤く染まる。抵抗しようと動いた時に、鋏の先が太股の付け根をスッと掠め、僅かな痛みを感じてからは貴司にはもう動くことなどできなかった。 「貴司さんの、可愛いね」  あっという間に貴司の下着は切れ切れのただの布へと変わり、外気に触れた下半身へと聖一の指が伸びてくる。どうにもできずに見つめていると、ペニスをそっと撫でられた。 「っ……んぅっ!」  直に触れられたその瞬間、貴司の体がビクリと跳ねる。こんな物が可愛いだなんてどうにかしてると思うけれど、反論する術もないから、せめて羞恥を誤魔化すように貴司は再び瞼を閉じた。  ――苦しい。  ずっと口を塞がれているから、喉の奥へと溜まってしまった唾液を飲み込むことが困難になっている。 「んっ……んぅっ!」  そのまま、少し強めにペニスを扱かれ、慣れない愉悦に体中が熱を帯び、だんだんと自分の体を制御することも難しくなった。 「あ、そうだ」  そんな中、何かを思い出したように聖一が小さく呟く。 「ここ……血がでちゃってる」  脚の付け根へと触られて、僅かに感じる鈍い痛みに貴司の体は逃げを打つけれど、ほんの少ししか動けない。 「逃げちゃ駄目だよ」 「ん――!んぅっ!」  ペニスを握る聖一の指へとギュッと力が込められて、貴司の体が痛みに跳ねた。  ――痛いっ……痛い!  急所を捉われ身悶えすると、それは優しい愛撫に変わり、ホッと力が抜けたところで今度は脚を大きく左右へ割り開かれてしまう。そして、 「うっ……んぅぅ!」 次の瞬間、脚の付け根へと触れたザラリと濡れた感触。恐る恐る薄く瞼を開いて見ると、自分の股間に顔を埋める格好になった聖一が、舌を使って傷をペロペロと舐めていた。そのまま、ペニスを扱く手を休めることなく彼は太股の付け根を舐め、吸いつき、軽く歯を立てたりしながら貴司の感度を高めていく。

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