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 ――だけどセイは、必要としてくれてる。俺だって……。 『側にいたい』と、貴司は思った。もしも赦されることならば、彼が望む形で良いから、もう少しだけ側にいても良いだろうか? と。  それが聖一のためにならないことだと頭の中では分かっていても、実際に会ってしまえば彼と一緒にいたいと思ってしまう。  心の奥ではそれが恋情に近い情だと分かっている。こんな不毛な関係には、必ず終わりが来ることも。ただ、認めることができなかった。 「苦しそう。ちょっとだけ取ってあげるけど、叫んだりしないで」  泣いたせいで鼻が詰まり、呼吸が細くなってしまった貴司の頬を指先でつついてから、聖一が口に貼られたテープをゆっくりと剥がしていく。 「んぅっ」  剥がされた途端、痺れたような痛みを唇へと感じ、唾液でグッショリ濡れてしまったハンカチを取ってもらった貴司は、何度も何度も咳込みながら、それでもどうにか口を開いた。 「セイ、逃げないから……手、外せ」  彼に触れられないことが、今は何よりもどかしい。目の前にいる聖一が、どんな表情をしているのかは涙で歪んで見えないけど、彼が逡巡していることは触れた肌から伝わってきた。 「逃げない、約束する。手だけで……いいから」  出てくる咳を我慢しながら途切れ途切れに言葉を紡ぐと、体の上から退いた聖一が、無言のまま、貴司の体を俯せにひっくり返す。そのまま、両手を背後で戒めていたネクタイがスルリと外されて、再度表に返された時、貴司が小さく礼を告げると、一瞬の間を置いてから聖一の顔が近づいてきた。 「っんぅ……ふぅ」  そして、唇が触れたその瞬間に舌が深くまで挿し入れられ、ようやく自由になった呼吸を再び聖一に奪われる。貴司は苦しみに喘ぐけれど、出した声をも飲み込むような聖一のキスに翻弄され、だんだんと頭の中がぼんやりとしてきてしまう。 「んっ、う…ん……んぅ」  巧みに動く彼の舌に口腔内をねぶられるうち、覚えのある感覚が体を支配しはじめて、突き抜けるようなその快感に、貴司は何度も体を揺らした。下半身へと集まる熱が怖くなり、貴司は思わず抵抗しようとするけれど、両手は酷い痺れのために動かすことも侭ならない。 「んっ……うぅ……ん」  ――このままじゃ、駄目だ……ちゃんと、伝えないと。  執拗な舌での愛撫に流されそうになりながらも、どうにか思考を保った貴司は弱い自分を心の中で叱咤しながら、まだ痺れている両方の腕を彼の背中へと必死に伸ばした。そして、おずおずと彼の背中へ腕を回したその途端、驚いたように聖一の体がピクリと跳ねた。更に指へと力を込めれば、口内を蹂躙していた舌の動きがピタリと止まり、少しだけ顔を離した聖一が首を傾ける。

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