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「一番効率いいやりかただよね。バラされたくなかったら、聖一に会うなってヤツ?」
可愛らしいと思っていた顔が歪んだ笑みを浮かべる様子に、貴司の胸が言いようのない気持ち悪さに包まれる。
「そんなに怯えた顔しなくても、すぐに気持ち良くしてやるよ」
動きを封じるためだろう。腹を跨いで座った男に頬を軽く撫でられて、本気なのだと悟った貴司は大きな声を張り上げた。もう、なりふりなど構っていられない。
「助けて! 誰か……んっんんぅ!」
「やべっ、颯、口塞ぐの取ってくれ」
「んんっ……んぅぅっ!」
すぐに掌で口を塞がれ、男の指示で動いた颯に金具と革でできた道具を器用な手つきで嵌められた。革のベルトが後頭部から前へと回され、丸い金具が無理矢理開かれた口の中へと捻じ込まれる。そして、穴が空いた形状のために閉じることができなくなった唇は、風呂の栓に良く似たゴムの塊によって塞がれた。SMなどで使用されている栓付きの開口具なのだが、貴司にはその知識もない。
「ん、んんーっ!」
「素敵だよ、良く似合ってる。僕はもう帰るけど、ゆっくり可愛がってもらってね」
身動きできない貴司の髪を余裕あり気にサラリと撫で、ニヤリと笑みを浮かべた颯が「お願いね」と一言告げると、男の一人が「見て行かねーの?」と聞き返す。
「別にコイツに興味ないし」
「酷えな。まあ金さえ貰えりゃ文句はないけど」
「映像確認したらちゃんと払うよ。今までだってそうだったろ?」
「そうだな。じゃあこっちはこっちで楽しむから」
そんな短いやり取りの後、「じゃあね」と告げる颯の声と、玄関のドアがガチャリと閉まる音が耳へと響いてきて、絶望的な状況に貴司はビクリと身じろいだ。
「タク、鍵閉めてこい」
リーダー格は腹の上にいる青年なのか、言われた通りに一人が動く。そして、恐怖に顔を強張らせている貴司の顎を指で捉えると、視線を合わせたきた青年が、薄い笑みをこちらに向けて囁いた。
「じゃあ愉しもうか……貴司さん」
と。
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