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「あっ……んうっっ」
「なんで、部屋に入れたの?」
親指と人差し指とで器用に舌を掴まれて、それを外へと引っ張りだされて微かな痛みに身じろぐけれど、そんな刺激にも感じてしまった貴司は知らず、甘い吐息を漏らしてしまう。
――怖い。
直感的にそう思った。問われている言葉の意味は何となくは分かるけど、たった今、繰り広げられた暴力と、見下ろしてくる聖一の氷のように冷たい瞳に恐怖心がわき上がる。それなのに、体は全く言うことを聞いてくれなくて、足りない物を求めるように腰が拙く揺れてしまう。
「俺のだって約束したのに、なんで……脚、開いたの?」
――それは……違う。
自分の意思じゃないのだと、ただそれだけを伝えたくて、貴司が首を横へと振ったその途端、舌を掴む聖一の指に更に力が込められた。
「あっ……ふうっ……ん」
「見れば分かるよ。クスリを使われたんだよね。でも、許してあげない」
言いながら、頬を撫でてくる彼をぼんやりと見つめていると、貴司の中に何とも言えない違和感が込み上げる。触れた掌はいつもよりしっとりしていて、その額にはうっすらと汗が滲み出していた。
――走って来たのか?
『許さない』と言いながらも、掌から伝わってくるのは慈しむような優しさで、何度も何度も撫でられるうちに貴司の目からは暖かい物が次々と零れ出る。
「んうっ」
体の疼きは消えやしない。だけど、彼に触れられたことによって、思考の方は少しずつだけど落ち着きを取り戻してきた。
「ちょっと待ってて。今、片つけちゃうから」
体を離す聖一を、縋るように見つめていると、顔にタオルを乗せられてしまい貴司の視界は白に染まる。見えなくなってしまう寸前、聖一が、苦しそうに顔を歪めたように見え、貴司の胸はギリギリとした鈍い痛みに包まれた。
それから、体の上へとシーツを掛けられ、心許ない状況からは少し解放されたけれど、今度は布がペニスへと触れる感触に疼きだす。必死にそれを堪えながら体を小さく丸めた貴司は、この部屋で何が起こっているのか耳をそばだてて聞こうとするが、アナルの奥が痒みを帯びてきてそれどころではなくなった。だから、聖一と聞き覚えのある男の声が、途切れ途切れに聞こえてくるが、内容までは聞き取れない。
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