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「溢れてくる」
注ぎ込まれた白濁が、聖一の指に掻き出され、内腿を伝うトロリとした感触に鳥肌が立つ。暗に汚いと言われていると、朦朧としながら貴司は悲しい気持ちに包まれた。
「折角、貴司に嫌われないように我慢してたのに」
「いっ、あぁっ……セイ、セイ、助け……て」
彼が小さく発した言葉の意味を考えることよりも、今の貴司は前立腺を掠める指の動きの方に神経を向けてしまっていた。
「もう、我慢できない」
「あっ……いっ、あっ……ああっ」
指の動きが激しさを増し、とめどない快感の波に貴司の体が震え出す。快楽に霞んでしまった思考は極めることだけに向けられてしまい、だからこの時、彼の背後から注射器を持って歩み寄ってきた存在に、貴司は全く気づかなかった。
「先生、いいよ」
指の動きがピタリと止まり、もう少しで達けるはずだった貴司の頭は混乱する。
「やっ……セイ、セイッ……いきたい……おねがい」
我を忘れて強請る姿に、今までになく強い欲情を、聖一が示しているのに貴司はまったく気づかない。
「後で一杯あげるから……ね」
自分を宥める彼の声に、イヤイヤと何度も首を振っているその最中、手錠で拘束されたままだった腕に何かがチクリと刺さった。
「いっ……なに?」
「良く眠れる薬。貴司はゆっくり寝てていいから」
「え……やぁ……怖い、セイ」
腕の中で震える貴司は相当錯乱しているらしい。カシャカシャ鳴る手錠の音に、少し眉根を寄せた聖一は、頬を両手で包み込んでからそっと優しくキスを落とす。
「ん……ふぅぅ……んっ、んぅ」
そのまま、舌を差し入れ口内を深く犯していくと、その体から徐々に力が抜け落ちて、長い時間をかけたあと、聖一が口を離した時には既にもう小さな寝息を立てていた。
「大丈夫。これからずっと、俺が守ってあげるから」
そう呟いた聖一は、貴司の体を強く抱きしめる。薄紅色に色づいた頬は涙の跡がクッキリと残り、口端の殴られた痕が痛々しい。それなのに、傷痕へ指で触れる聖一の表情は、宝物を手に入れたみたいに確かな喜色を滲ませていた。
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