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  *** 『嫌ぁっ……止めて!』  ――何てことを。 『いたぁっ……いやぁ!』  ――してしまったんだろう。  目覚めると、辺りは静かになっており、昨晩自分が犯してしまった少年が、隣で静かな寝息を立てていた。  ――俺は……あんな。  酷いことをしてしまったと、今更いくら悔やんでみても、過ぎた過去は戻らない。昨夜、少年の中へ貴司が精を放った後、媚薬によって乱された彼は三人の男によって犯された。  貴司自身はその横で、聖一によって犯されていたが、行為の途中プツリと意識を失ってしまったから、彼が最後どうなったのかは知りようもなかったけれど、きっとこれは間違いなく強姦だと言えるだろう。  ――酷いことを。  嫌がる彼の叫び声が頭の中に木霊する。しかも、彼を最初に貫いたのは他でもない貴司自身だ。  ――俺も、『加害者』なんだ。  これまでは被害者だと思っていたが、薬のせいにしてみたところで犯した罪は消えやしない。  ――可哀想に。  ぼんやりと、隣で寝ている少年を貴司は見つめる。見た目からすると中学生くらいに見えるが、実際にはどうなのだろうか? 寝ているというよりは、凌辱の末に気を失ったという表現が正しいのかもしれない。  彼が一体何者なのか貴司は全く知らないけれど、昨晩、聖一によって連れてこられたこの少年が、心や体に負った傷はかなり大きなものだろう。  外は激しい雷雨のようで、窓を激しく叩く雨音が室内にまで響いていた。そして、一際大きな落雷の音が轟いたその瞬間、少年がみじろぎしたため、貴司は慌てて目を瞑り、彼の様子をそっと伺う。 「う……うぅ……ん」  聞こえてきた声の後、目覚めたらしい彼がこちらへ視線を向け、コクリと唾を飲みこんだのが気配から伝わってきた。その後、動き出した彼の気配に薄目を開いて確認すると、洋服を身に付けている華奢な背中が目に入る。 『ごめん』本当は、一言そう謝りたいと心の底から貴司は思った。  ――きっと、声を掛けたら怯えてしまうだろうから。  だけど、今彼に声を掛けても自己満足にしかならない。そう考えると、貴司はドアが閉まる時まで、寝た振りをしてやり過ごした。  聖一の、真意が全く解らない。考えたって分からないことは分かっていても、考えずにはいられない。何がどうしてこうなったのか? この闇に、本当に終わりはないのだろうか? 諦めかけていたけれど、今の状況を続けていてはお互いが駄目になってしまう。その前に、何とかこの状況を変えなければならないと貴司はこの時強く思った。  まずは、自分が変わらなければならない……と。

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