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「それよりお前、合意の上でここにいるのか?」 「え?」 「俺は正直どっちでも構わないし、お前等の趣味ならそれでいい。だけどヒナに聞けって頼まれたから……お前が監禁されてるんじゃないかって」  その言葉に、見る見る内に青ざめていく貴司を見ながら、浩也の中での疑問が全て確信へと姿を変える。ヒナこと矢田部(やたべ)日向(ひなた)とは、すれ違いながらようやく想いが通じたばかりだったから、凌辱の傷を労りながらここ何日かを過ごしていた。  数日前、聖一によって届けられたUSBには日向が輪姦されている映像が録画されていた。それを見た時、もちろん浩也は穏やかではいられなかったが貴司を憎むことはしない。誰が悪いのかなんてことは、十分に知っているから。二人でつるんで遊ぶ時には散々悪いこともしたが、今回のことは悪ふざけで済ませるわけにはいかなかった。 『データを消しに行く』と日向へ告げた時、一緒に行くと言われたけれど、何とか宥めて置いてきたのは正解だったと浩也は思う。玄関のドアが開いた途端、気づけば聖一のことを殴っていたなんて、日向が知ったらきっと心を痛めてしまうはずだから。 「彼が、そんなことを……」  驚いたように呟いている目下の華奢な存在は、血色も悪く所々に打撲痕がついていて、首輪の存在を抜きにしても、本人の意志でここにいるとはとても考えられなかった。 「もし、これが同意じゃないなら、警察に通報したほうがいい」  聖一とはここ数年一緒に遊んでいたけれど、友人と呼べるほど近い存在ではない。時には人に言えないようなことも二人でやってきたけれど、お互いのプライベートを深く詮索したりはしなかった。 「彼は、セイがしたことを……警察に言うのかな」 「それはまだ分からない。それよりどうなんだ?」  日向が自分のされたことを警察に届ける可能性は、性格上、多分低いと思うけれど、それより今は目の前にいる彼の方が先決だ。 「俺は、ここを出たい。俺さえいなくなれば、きっとセイは普通に戻れるから。だけど、もし赦されるなら、警察には言わないで欲しい。都合がいいことを言ってるって思うけど」  そう告げてきた貴司の瞳は切なげな色に揺れていて、そんな表情を見てしまったら、浩也に彼を責めることなどできるはずもなくなった。 「……ったく」  貴司はきっと聖一のことを大切に想っている。二人の間に何があるのかは想像しようもないけれど、もしも想いが通じているならこんなことにはならないはずだ。

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