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「うっ」
頭を掴んだ浩也によってベッドへと顔を押しつけられ、前のめりに倒れた貴司は息を詰め、指をギュッと握り締める。
「膝で立って」
「分かった」
指示を出された貴司はそれに従おうとするけれど、震えが段々大きくなって体がうまく動かなくなる。それでも何とか言われたように膝を踏ん張り、腰を高く持ち上げると、頭から退いた浩也の手に両の手首を掴まれた。
「縛るぞ」
淡々とした彼の声音に貴司の羞恥がさらに増す。答えることもできない内に、手早く背中で手首を括られ背後へ回った彼から尻をペチリと軽く叩かれて、アナルを晒している状態に、今更気づいた貴司の体が薄紅に色づいた。
『お前には、痛い思いをしてもらう』
さっき浩也はそう言った。この状況で何もしなければ、却って疑われてしまう。聖一の目を誤魔化すためには〝それなり〟以上の報復の痕を残さなければならない……と。
近い内に必ず貴司を迎えに来ると浩也は言ったが、それがいつになるのかまでは聞くことができなかった。本当に来てくれるのかなんて、そんなことは分からないけれど、今の貴司は彼を信じる他に逃げ出す手段がない。
彼の大切な人にあれほど酷い仕打ちをしてしまったのだ。もし浩也の言葉が嘘だとしても、全てを受け入れようと考えて貴司はコクリと頷いた。
「口、塞ぐから」
布が口へと宛てがわれたから貴司がそれを唇で喰むと、残った部分が頭の後ろで結ばれる。猿轡を噛ませた理由は、浩也にとっては悲鳴を聞きたくないからだが、貴司にしても情けない声を聞かれないのは有り難い。萎えたままのペニスの付け根にコックリングを嵌められて、どうされるのか不安になって浩也の方を振り返ると、眉間に皺を寄せた彼は苦い表情を浮かべていた。
申し訳ないと貴司は思う。こんなこと、きっとしたくもないだろうに、自分のために動いてくれる彼に心で謝ると、察したように動いた掌が貴司の頭をふわりと撫でた。
「手加減はしない」
低く響いた彼の声に貴司が頷き返した途端、頭に置かれた浩也の掌へグッと力が込められて、再びシーツの上へと顔を強く押しつけられてしまう。
「うぅっ!」
そして、空気を裂く音と同時に、尻へと激しい衝撃がきた。容赦しないと言うだけあって、かなりの痛みが臀部を襲う。
「んうぅっ」
間髪入れずに再度打たれて思わず体が逃げを打ったが、聞こえてきた「堪えろ」の言葉に崩れそうな膝へとギュッと力を込めた。そのまま、感じる痛みが痺れと熱へ変化するまで叩かれて、感覚さえもが麻痺したところで浩也は一旦手を止めた。
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