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――セイのことは大切だ。だけど今は……。
「酷いね。大丈夫?」
「……んうっ!」
考えの途中、突如間近から聞こえてきた聖一の声。驚きの余りビクリと体を揺らしてしまったその途端、乳首の根本を強く引かれて貴司の口から悲鳴が上がった。
「うぅ……んっ」
――セイ……無事だった?
いつのまに来たか分からないけれど、この状況で大丈夫なはずもなく、貴司は首を緩く振りながら意思表示を試みるけれど、聖一の手は伸びてはこない。
――どうして?
「んっ……ふぅっ」
すぐに解いて貰えるものだと期待してしまっていただけに、緊張が緩んだ体はさらに激しく痛み出す。
「泣いてるの?」
柔らかなものが頬へと当たり、次の瞬間視界が急に明るくなる。
「んうっ……」
目を何度か瞬かせると、聖一の顔が瞳に映り、視線を少し下げた貴司は彼の姿に驚いた。
「足のは何とか取れたんだけどね」
口を使って目隠しを上へとずらしてくれたらしいけれど、聖一は後ろ手に腕を縛られてしまっている。
「とりあえず、口で何とかするから」と聖一に言われ、どういう意味かも分からないまま、抜け出したい一心で何度も必死に頷いていると、突然背中を向けた彼が、戒められた腕を使って貴司の体をひっくり返した。
「んうぅっ!」
痛みに涙が溢れ出す。顔と膝とで体を支え、うずくまったままカタカタ震える貴司の横へと来た聖一が、幾つもある結び目を、時間をかけて口で器用に解いていく。 それから、口を塞ぐ猿轡も外され貴司は何度か咳をした。
「セイ……ごめん」
「貴司は悪くないだろ?」
思わず出た謝罪の言葉に優しい声が返されて、振り返ろうと貴司は動くが、解放されたばかりの腕は、痺れきって感覚がなくなっていた。
「すぐに動くのは無理だ」
手が動かない状態では、彼の拘束をすぐに解くことはできない。焦った貴司はそれでも指を動かそうとするけれど、「焦らなくていいから」という聖一の声がきこえた直後、背中へピトリと舌を這わされて背筋を悪寒が突き抜けた。
「なっ……やめ…ろ……あっ」
みじろぎをした拍子に膝と乳首を繋ぐ糸が伸び、刺激に貴司は声を上げるが彼の舌は止まらない。
「あっ、やだ……セイッ」
どんどんと下へ移動するそれを制止するために懇願するが、聖一はなにも答えてくれず、舌は臀部へと降りてきた。
「やっ、やめ……あぁっ!」
そして、アナルを塞いでいるテープを、歯を使って一気に剥がす。
「血が……」
「やっ、いたいっ!」
突き刺さっているバイブの淵を這うように舌が這い回り、痛みに叫んだ貴司だったが、すぐにそれは悲鳴へと変わった。
「ひっ……あああぁっ!」
聖一が、バイブの持ち手を横から咥え、それをゆっくりと抜きはじめたのだ。
スイッチは止められているから振動はもうなかったが、中を擦るバイブの動きと、アナルの渕へと感じる痛み、それに、汚い部分を聖一の目の晒している羞恥から、逃れようと体を捩るが膝が上手く動かない。
「やっ……あぁ」
今までの振動によって熱と痺れを帯びた内壁が、引っ掻くようなバイブの動きで、痛みとは違う疼きにも似た感覚を持ち始めた。
「い……セイ、やめろ……ああっ」
体の変化についていけずに止めろと喘ぐ貴司の中から、次の瞬間ズルリとバイブが抜け落ちる。
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