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第5話 *
鬼の頭領は、桃太郎が大嫌いでした。理由は明白……口では『島と島民を守る』と言いながら、行動に表れていなかったからです。
同棲一日目の夜。近所に住む島民が少し騒がしくしていると、桃太郎は殴り込みに向かいました。その日は祝賀会をしていて、そこに居た島民は十を超えていましたが……桃太郎は全員、殴って黙らせたのです。
どうしてそんなことをしたのかと訊いたら、桃太郎は素直に答えました。
――『貴方が熟睡できないであろう騒音だったから』と。
同棲二日目の昼。桃太郎はお供として連れてきていた犬の首を絞めて、殺してしまいました。犯行は朝だったらしいのですが、頭領が気付いたのは昼だったのです。
どうしてそんなことをしたのかと訊いたら、桃太郎は素直に答えました。
――『貴方に懐かないから』と。
他にも……頭領に用事があってやって来た島民を『怪しいから』と言って半殺しにしたり、頭領が近隣の島民と『猿が屋根を上って迷惑だ』と話していたと知った瞬間に猿の首を刎ねたり……桃太郎の行動は、狂気的なものばかりだったのです。
けれど一貫して……全ての理由には、必ず頭領がいました。桃太郎の言動は全て……頭領にとっては、媚び売り以外の何物でもなかったのです。
取引内容を反故にする桃太郎へ、頭領は態度を硬化させていきました。
――だから、今起こっていることは逆に……利用してやろうと考え直したのです。
「ん、く……ッ、ぃ、あ……ッ」
寝込みを襲ってきた桃太郎に対して、最初は非協力的だった頭領ですが……最近、そういった行為とは無縁だったことを思い出しました。
――なので、桃太郎の体を性欲処理に利用することとしたのです。
小さな体の、小さな後孔……そこに成人男性の屹立した逸物を咥えさせるだなんて、はたから見たら強姦でしょう。
それでも、頭領は止めません。
そして桃太郎も、止めないのです。
「は、ぅ……く……ッ」
「いつもの気持ち悪い笑みはどうした? あァ?」
「おや……すみません、私と……した、ことが――く……ッ」
頭領に言われ、桃太郎は苦悶の表情を一変させます。口元だけで笑みを描き、輝きの無い瞳で頭領を見つめたのです。
馬乗りしていた桃太郎は、組み敷かれていました。両の手首を頭領の手によって固定され、下半身では頭領へ無理矢理奉仕させられ……桃太郎は逃げられません。
頭領が腰を引くと、桃太郎の体が強張ります。
「ふ、ぅ……ッ」
逆に、腰を打ち付けられても……桃太郎の体は強張りました。つまり、ずっと硬直したままなのです。
「ひ、ぃあ……あ、ッ」
「どうだ? 痛いだろ?」
性欲も処理出来て、憎き桃太郎を痛めつけることも叶う。頭領にとって、これほど素敵な行為はありません。
――けれど、桃太郎は頷きませんでした。
「へ、き……です……ッ」
そう言ってから消えかけていた笑みを、もう一度浮かべたのです。
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