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第11話 *
いつか必ず、殺してみせる。そんな想いを抱きながら始まった新婚生活も、気付けば三ヶ月が過ぎました。
最近の桃太郎は、驚く程に大人しいです。人を殴らず、家畜も手にかけず……島民とも波風立てずに接しているのでしょう。頭領の耳には、不穏な噂話が入ってこなくなったのです。
幼くて、世間知らずな桃太郎へ常識を叩き込み始めた頭領は……自身の中で確実に起こっている変化に、薄々気付き始めていました。
畳に爪を立ててしまわないよう配慮しているのか、桃太郎が自身の両手を力強く握り締めます。
「ん、ふ……ッ、ぅ……ッ」
揺らめく蝋燭の火から目を背け、桃太郎は自身を組み敷く頭領を見上げました。
――唇で弧を描きながら。
「頭領、さん……気持ちいい、です、か……っ?」
「――あぁ」
「そうですか、そう、ですか……う、く……ッ」
声を押し殺し、気丈に振る舞う桃太郎を見下ろしながら……頭領は熱く反り勃つ逸物で、桃太郎の小さな後孔を何度も穿ちます。
「そ、れは……喜ばしい、です……ね、ッ」
桃太郎の小さな逸物は、相変わらず萎えたままです。輝きの無い瞳は、ほの暗く頭領を映しています。
何度も何度も、頭領は八つ当たりのように桃太郎を犯しました。ただの暴力と言っても過言ではない行為です。
初めは、苦しそうに呻く桃太郎を見ると……幾分か、胸がすきました。それは、真っ向から対立したところで勝ち目の無い相手にできる、小さな反抗だったからです。
――なのに……今の頭領は少しだけ、変わってしまいました。
「――あッ、ぐっ、ん……ッ」
畳にも、脱がした衣服にも……頭領にすらも縋らず、たった一人で苦痛に耐え忍んでいる桃太郎を見ても、頭領は胸がすかなくなったのです。
――それどころか、黒くて粘り気のある【何か】に、胸を埋め尽くされていく心地でした。
「は、あ……ッ、頭領、さん……っ? いかが、なさい……ました、か……っ?」
「――あ? な、んだよ……っ、いきなり」
「いえ……っ」
頭領の返答に、桃太郎は笑みを消します。
「私の、体では……物足り、ませんか……っ?」
そう言われて、頭領はやっと……【動きを止めていたのだ】と気付きました。
「そういう、わけじゃ……ねぇよ」
「……そう、ですか……良かった……っ」
再び、桃太郎が笑みを浮かべます。
「どうか……手荒に、乱暴に、貴方が望むまま……お好きに、お使い下さい……っ」
まるで桃太郎にとって、自身の体は消費するしか価値のない道具かのような台詞です。
桃から産まれ、得体の知れない存在としてぞんざいな扱いを受け続けたであろう桃太郎が、小さく笑います。
何故だかその笑みが……頭領には、痛々しく見えて仕方ありませんでした。
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