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第15話
ひとしきり笑った鬼の頭領は、涙を拭いながら青年を見ます。
「頭領? 大丈夫か?」
「いや、大丈夫だ、悪かった。……すまない、実は今、桃太郎を探していて……」
「へ? 今?」
話が脱線してしまいましたが、頭領の目的は桃太郎の捜索です。普段なら家に戻ってくる時間帯だというのに、桃太郎の気配すら感じなかったことを思い出し、青年に訊ねます。
青年は腕を組み、唸りました。
「う~ん……見た、っけなぁ……? 今朝は確かに見たんだけどなぁ……」
雨の中、島民に何かがあっては取引違反になると言って島の探索へ出て行ったことは、頭領も知っています。問題は、その後なのです。
うんうんと唸る青年へ、頭領は祈るような眼差しを送ります。
すると青年が突然、ハッとしたような表情を浮かべました。
「――って、いやいや! 頭領、何であの子を探してるんだ?」
「は? 『何で』って、何だよ?」
青年の言葉に、頭領は首を傾げます。青年は鼻息荒く、頭領へ詰め寄りました。
「別にあの子がどうなろうと、どうだっていいんじゃないのか? 頭領はいつか、あの子を殺しちまうんだろう? なのに、いっちょまえに心配して……気でも触れたのか?」
尤もな言葉に、頭領は押し黙ります。
確かに……桃太郎がどうなっていようと、頭領には関係ありません。最終的に頭領は、桃太郎を殺すつもりなのですから。
――けれどそれは、桃太郎が島と島民に危害を加える可能性しかなかったからです。
今の桃太郎はどうでしょう? 青年の話を聴く限り……危険因子には思えません。
頭領は言葉を探し、口を開きます。
「アイツにも、色々あったみたいで……まだ、殺す時じゃない……気がするんだ。しかも、何だ……上手く言えないんだが、今は……嫌な予感が、して……」
妙に歯切れの悪い頭領とは対照的に、青年は朗らかに笑いました。
「まぁ、あの子に怯えてる島民は確かにいるけど……オレ達みたいに、あの子を好いてる奴等も増えてきてるのが実状だしな! 無意味な殺生はしたくないって気持ちも分かるぜ!」
そう言った青年が突然、大きな声をあげます。
「――ああぁッ! 思い出したッ!」
「っ! 桃太郎の居場所か!」
頭領の言葉に、青年は頷きました。そのまま慌てた様子で、青年がある一点を指で指し示します。
「あの子、帰ろうとした矢先に呼び止められてたんだッ! んで、そのまんま家の中に入ってったぜッ!」
「その家って――」
頭領は青年が指を指す方向を向いて、愕然としました。ぼんやりとあった嫌な予感が、強さを増したからです。
青年が指し示していたのは……結婚初日、桃太郎が殴り込みに行った――近所の家でした。
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