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第12話
「俺の属性は『火』『水』『土』『光』。火と光の色が濃いのが分かるか?」
そう言われて、僕はもう一度水晶を覗き込む。
……本当だ。赤と黄の光が濃い。
「俺は4つの属性の内、火と光の魔法を得意としている」
だから色が濃くなると、ジークさんは教えてくれた。
「じゃあ、次はトーマが触ってみてくれ」
そう言ってジークさんは水晶から離れた。
すごいなぁ。こんな水晶1つで魔力の強さから属性まで分かっちゃうなんて。
僕はそう思いながら、もう一度水晶の前に立つ。
これで僕の魔力量を計るのか……
そう思って、僕はハッとした。
ちょっと待って!これで僕に魔力があったら、僕も魔法が使えるってこと!?
異世界召喚に置いて、召喚者は何かしらのチートなのが一般的。僕にも何かのチート能力があるかも!!
そう思って僕は勢いよく水晶に触れた。
・・・・・・・・・
「……何の反応もありませんね」
「……そうだな」
ジークさんとカノエさんが僕の触れた水晶の覗き込みながら呟く。
やっぱり僕なんかがチート能力なんて、そんな事あるわけないのに……
少しでも期待した僕がバカだったのかな。
そう思った瞬間、クラッとして目の前が真っ暗になった。
ふと目を開けると、そこは知らない部屋だった。
僕はキョロキョロと部屋の中を見回す。
天蓋のついたベッド。高そうなソファーにテーブル。壁には絵画が飾られている。
天井には玄関ホールよりも少し小さいシャンデリアがキラキラとしている。それよりも何よりも部屋が広い!
この部屋、僕の部屋の何倍あるんだろう?
そう思いながらキョロキョロとしていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
カチャっとドアが開いて、顔を出したのはカノエさんだった。
「良かった、気が付いたみたいですね。」
そう言ってカノエさんはホッとしたように微笑む。
「……あの……僕は何で……?」
「覚えて無いですか?トーマくんはあの後倒れたんですよ。」
そう言われて、僕は思い出してみる。
僕は水晶に触れて、あの後目の前が真っ暗になって………その後の記憶がない。
でもさっきカノエさんが『倒れた』って言った。
「す、すいません。僕、迷惑掛けましたよね?」
僕が謝ると、カノエさんはクスクスと笑う。
「迷惑だなんて、そんな事は思ってないですよ。それより、気分はどうですか?」
「…ぁ……大丈夫、です」
僕がそう言うと、カノエさんはフッと笑った。
「今日はゆっくり休んでください。この部屋は自由に使ってもらって構いませんから」
カノエさんはベッドの横にある棚の上に水の入ったグラスを置きながらそう言う。
「何かあったら呼んでください」
そう言ってカノエさんは部屋を出ていった。
一人になった部屋で僕はため息をついた。
水晶、反応しなかったな……
元々何も出来ないのに魔法も使えないなんて、僕は何の為にこの世界に召喚されたんだろう?
漫画や小説では何か役割があって召喚される設定が多いのに、僕には何もない。
……本当、僕って役立たずだな。
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