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05※

「笹山っ、お、俺は大丈夫だからな!気にしなくても、こんなの……」 平気だから。 近付いてくる笹山に、ソファーの端まで逃げた俺は身振り手振りで元気アピールを試みるが、腰を掴まれてしまい思わず「ぎゃっ」と飛び上がりそうになった。 「ま、待て笹山……っ」 「っ、ごめんなさい……けど、店長の言うとおりです。……俺のせいでおむつ生活する原田さんには耐えられません」 「さ、笹山……っ」 そんな女の子が見たらときめきで胸を痛めるような切ない顔をして人のおむつ姿を想像しないでくれ。 「流石物分かりがいいな、笹山。あとで砂糖型媚薬を一セットをやろう」 「……店長」 「じょ、冗談だ、可愛い冗談だろう。そう怒るな」 「アホなこと言ってる暇あるなら原田さんに手当をしてください」 「そう急かすな。性急な男はモテないぞ」 会って数分で人にセクハラかましたやつが言うと説得力があるな。などと、言ってる場合ではない。逃げようとするが、笹山に「ごめんなさい」と抱き抱えられる。そのまま羽交い締めにされるように笹山の膝の上に座らせられれば、背中に感じる笹山の体温に全身が緊張する。 いや、普通に考えてこの体勢はやばすぎる。 「ああ、そうだ。そのまま捕まえておけ」 「や、め……っ」 「そう怯えるな。ただ手当をするだけだと言ってるだろう。それに、俺は別にお前の体を見るのは初めてではないだろう」 それとこれとは状況が違う。というか、笹山もいるのに。こんな。 手慣れた手付きで下を脱がされ、あっという間に下着一枚だけになる下腹部。背後で笹山が唾を飲む音が聞こえて、余計死にたくなる。 「……可哀想に、こんなに萎んで」 「て、店長……っ!」 「そう慌てるな。……笹山に見られるのが恥ずかしいのだろう。それなら、動くなよ」 言われて、息を飲む。ボクサーパンツのゴムを引っ張られ、ずらされるそこから露出するケツの穴に息を飲んだ。 確かにこの角度なら俺にも笹山にも見えないだろう。けれど、でも、だからって。 軟膏のキャップを外した店長が鼻歌交じりその塗り薬を人差し指にたっぷり絡める。そして、「息を吐け」と、薬を絡めた指先で露出したそこを一撫でされた瞬間びりっとした痛みに似た感覚が背筋を駆け抜けた。 「く、ぅ……っぁっ、うそ…っ」 先程まで規格外の太さの異物で散々拡張させられていたそこは、少しの力を加えられただけでもそのままつぷり、と店長の指を飲み込もうとするのだ。冷たい指先。違う、もしかして熱いのは俺の方か。 「っ、く、ぅんん……っ!」 「可哀想に、真っ赤に腫れてるではないか。……それに熱を持ってる、早くしなければ手遅れになるぞ」 「て、おく、れ?」 「ああ、だから……少し辛抱しろよ」 そう、店長が口にしたとき。 熱を孕んだ内壁を内側から撫でるように指が動き、その瞬間、全身に電気を流されたみたいに体が大きく跳ねた。 「ぅ、ひ」 痛い、というよりも、細い針で刺されたようなその鋭い感覚に腰が震える。足が揺れ、下着がずれそうになり、咄嗟に足を閉じて隠した。けれど。 「て……っ、んちょ、抜い……っ、ひ、ぅあ……ッ!」 「そんなに可愛い声で喚くな。悪いことをしてる気分になるだろう」 あくまで自分は悪いことをしていないとでもいうかのような言い草に腹が立ったが、それも中を捏ね繰り回されれば掻き消される。 「っふ、ぐ…ぅ、んんぅ……っ」 気持ちよくない、気持ちよくない、痛いだけだ。そう、唇をぐっと噛み締め声を殺そうとするのに、内壁、火照った粘膜に軟膏を塗り込まれる度にその摩擦で更に溶けそうになるのだ。 「ぃ、ぁ……っ、や、め……も、…いいです……から……ッ」 「何を言ってる。お前のためにやってるのだぞ」 「っ、こ、ンの……ッ!」 「……っ、原田さん、痛かったら俺にしがみついていいので」 痛みに喘いでる俺を心配したようだ、覗き込んでくる笹山にぎょっとして、「見ないでくれ」と背中を丸めれば、「原田さん」と背後で笹山の傷ついたような声がする。 ……くそ、優しい。今はただその優しさが怨めしくて堪らない。救いになっているのも確かだが、こんな姿、見られたくなかった。 「笹山、手が緩んでるぞ。しっかり足を持っておけ」 「ぅ、へ」 「……っで、ですが」 「傷は奥深い。肝心なところまで薬を塗らなければいけないだろう」 「…………っ、すみません、原田さん」 なんで謝るんだ、とぼんやり思うよりも先に、腿の裏に差し込まれる笹山の手によって大きく足を開かされる。 ぎょっとする暇もなかった。 「っ、な、ゃ、やめ……っ!」 「いいぞ、そのまま持っておくんだ」 隠していたところまで丸出しになるような恥ずかしい格好に、慌てて足を閉じようとするが、間に割って立つ店長にそれを止められた。 「すみません、俺、目を瞑っておくので……!」 「そ、ゆ……問題じゃ……っ!んんぅ……っ!」 引き抜かれた指。開き、ぐずぐずになったそこに軟膏をたっぷりと追加され、更に塗り込まれる。腹の中でぐちゃぐちゃと音を立てるのが恥ずかしくて、いくら見てないとはいえ、それを聞かれると思っただけで死にそうになる。 「どうした、原田。先程よりも締まりが良くなったな」 「っ、ぅ、るさ……ぃいい……っ!」 「くく……っ!耳まで真っ赤ではないか。笹山に聞かれてるというのがそんなに恥ずかしいのか」 当たり前だろ、と蹴りを入れたいところだが、追加で入ってくる指に息を飲んだ。 ばらばらに動き、それぞれの指が的確に痒いところに届くのだ。妙な声が漏れてしまいそうで、それを必死に殺す。けれど、腹の裏側を優しく撫でられただけで声が漏れてしまい、熱を持った下腹部がふるりと震える。 「ぅ、も、や……め……っ、抜いて、くださ……っ!んぅ、い、ぁ、ひ……ッ!」 逃げ腰になればなるほど、背後の笹山の背中にくっついてしまいそうになり、追い詰められる。腹の中が熱い、ジンジンと痺れ、もっと奥まで触ってほしい、なんて思ってしまう自分が恐ろしくなってくる。 「ぁ、っ、く……ッ、ぅひ……ッ!」 「店長、そろそろもう……」 「いいや、まだだ」 「っ、ひ――ッ」 複数の指が指の中で広げられる。そのまま円を描くようにぐるりと内壁を擦られた瞬間、下腹部に甘い刺激が走る。 「っ、ぁ、は……っ、いや、だ、ぁ……っ!」 「っ、店長……ッ!いい加減に……」 「何を言ってる。よく見てみろこいつの顔を。嫌がってるように見えるのか?」 顎を掴まれ、持ち上げられる。つられて視線を動かせば、しまった、笹山と目が合ってしまう。 ……というか待ってくれ、目を開けないって言ってたのに。 「っ、み、るなぁ……っ!」 「す、すみません……っ!つい……」 「そう殺生なことを言ってやるな。こんなことになってるやつを目の前にして見るなという方が無理な話だ」 ぴん、と片方の手で頭を擡げ始めていたそこを軽く弾かれ、瞬間、突き抜けるような甘い快感に堪らず腰が震えた。隠したいのに、見られたくなかったのに、そんなもの全部無視して開かれる足の間、濡れたそこから白濁が溢れるのだ。 「っ、はしたない奴め……人が手当をしてやってるというのに何を勝手に気持ちよくなっているんだ。」 そう冷ややかに笑う店長に剥き出しになった性器を掴まれる。 射精直後、くたりと萎え、敏感になっていたそこへの刺激に堪えれず声が漏れた。 ぴくりと反応する性器はみるみるうちに店長の手の中で芯を持ち始める。それが死ぬほど恥ずかしくて、手を離してくれと目で懇願するが店長は余計楽しげにするばかりで。 店長は、先端からとろとろと溢れ出す先走りを亀頭に塗り込むように敏感な部分を触ってくるのだ。 「くくっ、見ただろう笹山。こいつは人に傷の手当てをしてもらっている最中に射精するようなやつだぞ」 「だらしがない下半身だな」と笑う店長。同時に肛門から指を引き抜き、その際にも中を引っ掻かれて声が漏れる。 言いたい放題言いやがって。 悔しいが、事実だから何も言い返せない。そりゃ変な触り方をしてきたこの男がそもそも諸悪の根源なのだが、だからって。 「そ、んなこと……っ」   ない、と言いたいのに、なんだか情けなくなってきた。こんなに凹んでるのにちんこは勃起するし、ケツは掘られるし、おまけにだらしない下半身呼ばわりでもうトドメだ。 じわじわと目の奥が熱くなり、視界がぐにゃる。 瞬間、店長はぎょっと目を丸くした。 「どうせ、俺は……堪え性も甲斐性もない……童貞捨てる前に処女捨てる羽目になった非モテですよ……っ」 「お、おい、そこまで言ってないからな……」 「店長……」 「俺のせいか?!」 「他に誰がいるんですか……っ!」 ぼろぼろと涙が溢れてくる。心身満身創痍である。いい年してとわかっててもどうすることもできない。足から笹山の手が離れ、そして「原田さん」と優しく抱き締められた。 「っ、すみません、貴方をこれ以上追い詰めるつもりはないんです。……店長が何考えてるのかは知りませんけど」 「笹山……」 「原田さんは何も悪くありません。気持ちよくなるのも男なので仕方ないです、なんも恥ずかしいことではありませんから……だからそんなに落ち込まないでください」 後頭部に回された手に、優しくよしよしと頭を撫でられる。年下に慰められて余計恥ずかしいが、この笹山とか言う男ひどくいい匂いがするのだ。 脱力した体を自分へと抱き寄せる笹山。これで柔らかい胸があれば最高なのだろうが残念ながらそこには硬い胸板の感触しかない。おまけに着痩せするタイプと見た。 くそ、なんだこの包容力は……俺が女の子なら笹山みたいなやつと結婚したかった……。思いながらその胸に体を預けようとしたときだった。 「待て待て!!何人を置いていい感じになってるのだ!!おかしいだろう!!」 「おかしいのは店長の方じゃないですか、いくらなんでも限度というものがありますよ」 「何を……さっきまで言うことを聞いてたくせに原田の泣き顔見た途端にそれか!末恐ろしい奴め……!!気をつけろよ原田、笹山はこうやって数多の女を落としてきた男だからな」 「…………」 「は、原田……?!!お前まで俺を無視するつもりか……?!」 ふい、と顔を逸らせばダメージを受けたらしい店長はわざとらしく嘆いてみせる。 やれやれと言わんばかりに笹山は溜息を吐いた。   「とにかく、これ以上は見過ごすわけにはいけません」 「糞、どうしてこんなに優しいいい子に育ってしまったんだ。俺の教育の賜物か…!」 「ツッコみませんからね」 どんどん冷ややかになっていく笹山の目にぐぬぬと唸っていた店長だがやがて諦めたようだ。 「フンッ、もういい!勝手にしろ!もう笹山とは遊んでやらんからな!」 小学生か。 というか仲良しか。 ぷりぷりしながら休憩室を出ていく店長。 店長がいなくなり、やっと出ていった…と内心ほっと安堵したときだった。ガチャッと扉が開き、その僅かな隙間からこちらを覗いてる店長がぴゃっとなにかを投げてくる。 いきなり飛んできたそのチューブのようなものを受けとれば、再びぴゃっと扉に引っ込んだ店長。 投げ入れてきたそれは先程たっぷり練り込まれていた切れ痔用の軟膏の残りだった。 「……」 直接渡してくれたらいいのに。と、思ったが直接渡されても素直にお礼は言えないだろう。取り敢えずありがたく頂戴しておく。 閑話休題。 今度こそようやく平穏を取り戻した俺は、笹山の手助けを受けながらも着替えることにした。 そして、笹山が用意してくれた水で喉を潤していると「よかったら」と笹山はホットミルクを用意してくれる。 至れり尽くせりというやつだ。じーんとなりながらも俺はありがたくその好意を受け取ることにした。 「……少しは落ち着きましたか?」 「ん…悪い」 「いえ、気にしないで下さい。俺に出来ることなんてこれくらいしかないので」 向かい側のソファーに腰をかける笹山は控えめにそう笑う。自虐的というか、卑屈というか、きっと、奥ゆかしいのだろう。俺は慌てて首を横に振る。 「そ……そんなことない。笹山には、何度も助けられた」 今回に限った話ではないが、笹山がいなければと思うとぞっとしない。そう、口下手なりに感謝の念を口にすれば笹山は少しだけ驚いたような顔をして、そして破顔した。 「寧ろ俺の方こそ、」 そう、笹山が薄く唇を開いてなにかを言いかけたときだった。 大きな音を立て、休憩室の扉が開く。 今度は誰だと開いた扉に目を向ければ、そこから見覚えのある茶髪の青年が入ってきた。 「あーくそ、疲れた!笹山、なんか飲み物くれよ」 四川だ。相変わらず偉そうなやつは入るや否やすでに人が座ってるソファーにどかりと腰を下ろしてきた。揺れるクッションに俺は顔を顰める。しかしゆっくり座れよ、と言い返す元気もない。 「笹山、コーヒー」 「それくらい自分でやってよ」 「無理。まじ腰いてぇんだって、あの睫毛野郎に雪崩起こしたAVの整理から雑巾で床磨きまでさせられたんだぜ?しかもあのイカ臭ぇAVコーナーで!」 「有り得ねえ、服に匂い伝染るしまじで最悪なんだけど」そう文句垂れる四川に、ぎくりと全身が緊張する。 もしかしなくても、もしかしないだろう。あの現場の整理をしたのかと思うと居たたまれないが、様子からして詳しくは聞かされてないのだろう。 笹山が動かないのを見て諦めたようだ、自ら台所へと行き、コーヒーメーカーを弄り始める四川。 「えっ、AVコーナー……?」 「なんだ、お前興味あんのか?……ああ、確かに好きそうな顔してんな。童貞くせえし」 「臭くねえよ!」 「ムキになんなよ童貞。ああ、でも、テメェには刺激強すぎるかもな」 ……こ、この野郎。 実際圧倒されて目のやり場に困っていただけに何も言い返せないのが悔しい。これが童貞の性か。 ぐぬぬとなる俺をせせら笑いながら、やつはカップにコーヒーを注ぐ。そして、何食わぬ顔して棚に並んでいた砂糖の容器を手にしたのだ。 あの、店長が用意した媚薬入り砂糖を。 「「あ」」 ざらざらと湯気沸き立つ茶色の液体へと消える小さな粒に俺と笹山は思わず声を漏らした。 「ちょ、待った、おい四川…!!」 それはなんかよくわからない媚薬やらなんやらが入った異物混入砂糖だぞ!というかなんで置いたままになってんだよ誰か処分しとけよ。俺とか。そう後悔するが、なにもかにも遅かった。 「おいおいおい!」と慌てて四川を止めようとしたが、遅かった。何事もないようにカップに口をつけた四川はそのままごくごくと中のそれを一気に飲み干す。 唖然とする俺たちの前、カップから口を離した四川は「あー」と溜め息にもつかないような声を洩らした。 「……やべ。砂糖入れすぎたかも」 そして、「甘過ぎ」と呟く四川はそのまま濡れた唇をぺろりと舐め取った。   毒漬け砂糖のお味はいかが?◆END

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